福島5、6号機の廃炉指示 首相、原発視察「国が前面に」

2013.9.20 05:25

 安倍晋三首相は19日、東京電力福島第1原発を視察し、事故後に廃炉が決まった1~4号機と同じ敷地内にある5、6号機を廃炉とするよう東電に指示した。東電の広瀬直己社長は「5、6号機の取り扱いの判断は年内にする」と回答した。視察後に首相が記者団に語った。

 首相は「しっかりと国が前面に出て、私が責任者として対応していきたい」と表明。東電に(1)廃炉に向けて現場の裁量で使える予算の確保(2)貯水タンクの汚染水を浄化する期限の設定(3)事故対処に集中するため5、6号機の廃炉の決定-を指示したと明らかにした。広瀬社長は、予算に関し「すでに引き当てている1兆円にプラスして1兆円を確保していく」と応じた。

 現時点で5、6号機の廃炉を決めた場合、東電は引当金積み立て不足などの処理を迫られ、経営再建の足かせとなる。政府は不足分を運転終了後も分割処理できるよう会計制度の見直しを進めており、新制度が5、6号機の廃炉に適用されると東電には急激な財務負担が生じない半面、費用は電気料金に転嫁され消費者の負担になる。

 現行制度では電力会社は40年間かけて廃炉引当金を積み立て、電気料金で回収しているが、運転終了時に引当金が不足していれば電気料金に上乗せできない損失として不足額を一括計上しなければならない。積立金不足は2012年度末時点で5号機が105億円、6号機が162億円。また、設備の残存簿価は合わせて1564億円に上る。現時点で廃炉を決めた場合、少なくとも1800億円超の損失が出る。

 経産省は電力会社が老朽原発などの廃炉を決断しやすくするため年内にも会計制度を変更。運転終了後も10年間は廃炉引当金の積み立てを認め、設備も資産として減価償却できるようにする。いずれも運転時と同様、費用は電気料金に転嫁し、利用者が負担する仕組みだ。

 東電の広瀬社長は設備投資の抑制やコストダウンなどで1兆円を捻出する考えだが、経営再建の切り札である柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働は見通しが立たず、コストダウンも限界に近づいている。「今はとにかく頑張るとしかいえない」(東電幹部)のが実情だ。

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