【Dr.小池の日本を治す!】福島原発の汚染水問題

2013.9.26 05:00

 ■抜本解決へ英知と総力結集を

 安倍晋三首相はIOC総会で、東京電力の福島第1原発の放射能汚染水について、「状況はコントロールされている」「完全にブロックされている」(9月7日)と述べました。しかし、「コントロール」どころか、汚染水の状態の把握さえ満足にできていないのが現状です。

 ◆現状と危険性の解明必要

 これまでの東京電力の対応の根底には、「汚染水はいずれ海に流せばよい」とする考え方があります。原子力規制委員長も、汚染水を海に流すことを肯定する発言を行っています。しかし、汚染水をいくら希釈しても、海に流すことに国内外からの理解は決して得られません。「いずれ海に」という考え方を一掃し、「放射能で海を汚さない」ことを、対策の基本原則として確立すべきです。

 そして、汚染水の現状がどうなっているのか--何が分かり、何が分かっていないのか、どこに問題と流出の危険があるのかなど、あらゆる角度から、国内外の専門的知見を総結集して調査し、福島県民をはじめとする国民と、国際社会に情報をありのままに公表しなければなりません。

 それなくしては、これまでのような“その場しのぎ”の対策ではない、抜本的で長期的な対策を打ち出すことはできないでしょう。

 さらに政府は、「収束宣言」を正式に撤回し、“非常事態”にあることを宣言すべきです。国内外の英知を結集した抜本的な対策を進めるためにも、このことを避けて通ることはできません。

 ◆当事者能力失った東電

 汚染水問題をここまで深刻化させた大本に、「コスト優先・安全なおざり」の東電まかせにしてきたことがあります。「原子力損害賠償機構法」も、“事故処理、賠償、除染は「東電の経営努力の範囲」で”というスキームです。ここに根本的な誤りがあるのです。

 すでに東電は、事実上の債務超過に陥り、公的資金で「延命」させている企業です。事故の収束・廃炉と除染・賠償をまともにやろうとすれば、東電の「見積もり」をはるかに超えることは確実です。このまま東電を公的資金で延命させながら、東電に「指示」するだけで、小出しの対策をつないでいくのでは、事態の抜本的打開は望むべくもありません。

 東電に対しては破綻処理を行い、資産を徹底的に洗い出し、メガバンクに必要な債権放棄をさせるなど、利害関係者に当然の責任を取らせる必要があります。そして、国が直接に福島第1原発の事故収束と賠償・除染に全責任を負う体制を構築すべきです。

 東電を破綻処理した後には、一時的に国有化して電力事業を継続することが必要になります。そのさい、将来の電力事業のあり方については、発送電分離などの電力供給体制の民主的改革をすすめることが必要です。

 発電事業は、再生可能エネルギーの活用を大規模に進めるためにも、多様な発電業者が参入できるようにすべきです。固定価格買い取り制度の拡充も必要です。同時に、送電事業者に対しては接続義務などのルールを強化して、公的管理を強める改革が必要だと考えます。

 ◆再稼働に向けた作業が障害

 いま、原発の再稼働に電力会社や原子力規制委員会が奔走しています、しかし、専門家や技術者などの総力をあげた対策が求められている福島原発の汚染水問題の解決にとっては、これが大きな障害となっています。

 原子力規制委員会は、全国各地の原発の再稼働に向けた地層調査などではなく、福島原発の地層・地下水などの調査・実態把握にこそ力を注がねばなりません。原発の再稼働や輸出のための準備や活動などは、ただちに停止すべきです。

 福島原発の放射能汚染水問題の抜本的解決を最優先課題として進めるために、将来のエネルギー政策への立場の違いを超えて、今こそ、英知と総力を結集するときではないでしょうか。

                   ◇

【プロフィル】小池晃

 こいけ・あきら 1960年生まれ、東京都出身。東北大学医学部医学科卒。東京勤労者医療会代々木病院などを経て現在、参議院議員、日本共産党副委員長・政策委員長。著書に「どうする 日本の年金」(新日本出版社)など。

閉じる