豊洲の大規模再開発、五輪にらみ始動 観光客「おもてなし」

2014.1.1 09:25

 東京オリンピックの選手村(晴海地区)と競技施設群(有明地区)の建設予定地に挟まれた豊洲地区で、大規模な再開発が始動する。豊洲埠頭(ふとう)(6丁目)では総開発面積約110ヘクタールのうち約4割を占める豊洲新市場の建設工事が今春始まる。約20ヘクタールを保有する東京ガスはスマートシティー「TOYOSU22」を整備する構想を本格化させるため、事業パートナーを募集する方針だ。

 千客万来施設を計画

 「もう工事を遅らせるわけにいかない。確実に落札が見込める予定価格を出したつもりだ」

 東京都の発注担当者にとって、築地の東京中央卸売市場を移転して新設する豊洲新市場の再入札が行われる2月までは眠れない日々が続く。4工区に分けて昨年11月に実施した入札では、青果棟、水産仲卸売場棟、水産卸売場棟の3工区(予定価格・約628億円)で落札者なしの不調に。年末ぎりぎりに予定価格を約1035億円と65%引き上げて入札公告を出し、工期は前回から1カ月だけ遅らせて2016年3月末に設定した。

 「豊洲新市場が完成しないと築地市場が移転できず、その跡地を通る環状2号線本線の工事がオリンピックまでに間に合わなくなる。今、建設業界で起きている深刻な職人不足への社会の認識もまだ十分ではない。工事に優先順位を付ける必要があるのではないか」と発注担当者は危機感を募らせる。

 豊洲新市場では、市場本体に加えて、世界からの観光客を「おもてなし」するための「千客万来施設」(敷地約1.7ヘクタール)も計画されている。当初は昨年6月までに開発・運営を行う民間事業者を決めるはずだったが、1月までずれ込んだ。こちらも市場本体の開場と同時オープンを目指している。

 いずれにしろ豊洲新市場の工事着手と、千客万来施設の民間事業者決定後に、周辺の計画が一気に動き出す見通しだ。

 豊洲埠頭の東側では、大手不動産開発事業者6社共同の大規模マンション開発「東京ワンダフルプロジェクト」(総戸数1660戸)の建設が12年春から始まっている。完成したら人口が一気に増えるため、入居開始時期に合わせて、豊洲西小学校が15年4月の開校に向けて準備を進めているほか、芝浦工業大学中学高等学校(板橋区)が豊洲6丁目に移転し17年4月に開校することを決めた。

 残すは東京ガスが保有する約20ヘクタールの広大な土地だ。東京都が1990年に「豊洲・晴海開発整備計画(通称・豊晴計画)」を策定したのを機に、同社が開発に着手。だが、これまでにガスの科学館「がすてなーに」を06年に開館しただけにとどまっていた。

 環境と防災に配慮

 同社は、昨年4月に子会社の東京ガス豊洲開発に、JR田町駅東口再開発などの事業を加えて「東京ガス用地開発」に社名変更し体制を強化。豊洲新市場の着工に合わせ、事業パートナーを募って豊洲地区の開発に乗り出す考えだ。

 2年前に江東区が「豊洲グリーン・エコアイランド構想」で緑豊かな環境と防災に配慮したまちづくりを進める方針を打ち出したのに合わせて、スマートシティー「TOYOSU22」を実現を目指す。

 最新鋭の高効率発電施設や再生エネルギーなどを組み合わせ、新市場などにエネルギーを供給する「スマートエネルギーセンター」が16年に完成する予定。このほかには昨年の段階で正式決定したプロジェクトはないが、環境配慮型のビルやマンションを整備する。

 「都市の低炭素化の促進に関する法律」の施行に合わせ、昨年10月に江東区が同構想を改訂。環境性能に優れた建物の建設に国からの助成が受けやすくなっており、そうした制度を活用する。

 「豊洲新市場の千客万来施設などの計画が具体的に示されると、隣接する区画などで事業の動きが本格化する」(東京ガス用地開発)見通し。20年に開かれる東京オリンピックまでには開発が間に合わない区画でも、仮設によるにぎわい施設を設置して世紀の祭典を盛り上げたい考えだ。

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