防衛装備、海外輸出へ第一歩 親密国に技術移転 政府が新ルール説明会

2014.5.13 06:13

 防衛装備の輸出規制緩和に伴い、海外主要国との共同開発などをめぐる動きが本格化してきた。政府は12日、防衛関連各社を対象に「武器輸出三原則」に代わる新ルールの運用方針を説明。親密国などに装備や技術を積極的に移転する考えを明らかにした。ただ、長年、“鎖国”状態が続いてきたため官民ともに海外移転のノウハウが乏しく、手探りの推進となりそうだ。

 経団連会館(東京都千代田区)で同日開かれたセミナーは、4月に閣議決定した「防衛装備移転三原則」の具体的な運用方針を政府が初めて公式に説明する場となり、防衛関連各社などから約240人が詰めかけた。

 飛行艇など注目

 防衛省の政策を説明した堀地徹経理装備局装備政策課長は「日本の装備品の強み、弱みを把握した上で海外市場のどこに売れるのか、民生と共用できるものを含めて仕組み作りを進めていきたい」と表明。6月にフランスで開かれる防衛装備の国際見本市「ユーロサトリ」に日本の関連10社とともに関連省庁が参加し、官民を挙げた「オールジャパン」体制で日本の技術をアピールする考えを示した。

 日本はこのセミナーに先立つ9日、厳格な武器管理を定めた武器貿易条約(ATT)に参加。防衛装備の国際市場にデビューしたことを海外に印象づけた。規制緩和方針を知った主要国からの関心は急速に高まっており、昨年以降の防衛省へのオファーは11カ国に上るという。

 規制緩和後の大型案件としては、新明和工業の海上救難飛行艇「US2」のインド向け輸出などが注目されている。また、次期主力戦闘機の米ロッキード・マーチン製F35は三菱重工業が名古屋でライセンス生産するが、今後は他のF35導入国向けに同機の機体の一部を委託生産する可能性も指摘されている。

 防衛各社は新三原則を「実質的な全面禁止から移転できないものを明確化したのは大きな前進」(大宮英明経団連防衛生産委員長=三菱重工会長)と歓迎している。ただ、「(新三原則には)期待はしているが、国の政策が前提。直接営業活動を行うのは現実的ではない」(松岡京平川崎重工業副社長)など事業拡大に慎重姿勢を崩していない。

 線引きどこに

 民間の反応が今ひとつなのは、自社の個別案件が新三原則に抵触するかどうかの見極めがなお難しいためだ。政府も、どの国に移転を認めるかの具体的線引きはこれからの課題で、経済産業省の中山亨貿易経済協力局貿易管理部長は「外務省、防衛省と密接に連携していかなければならない」としている。

 こうした問題をクリアしたとしても、欧米の巨大メーカーとの国際競争が待ち受けている。

 三菱重工の防衛・宇宙ドメイン長の水谷久和常務執行役員は「日本企業の技術力、コスト競争力がワールドワイドで試される」と語り、政府と産業界が密接に連携する必要性を訴える。

 武器輸出を推進している欧州各国や韓国などの軍では、装備購入国の部隊に訓練を施す“アフターサービス”を提供するのが一般的だ。防衛省も「こうした体制を含めた仕組み作りを検討していきたい」(堀地課長)としている。

 装備の海外移転や他国との共同開発は割高な防衛予算を削減するとともに、同盟国などとの関係強化を通して国際協力に貢献することが大きな狙いだ。しかし国内には、平和憲法を理由に装備移転に反対する意見も根強く、防衛産業の国際化への逆風となりそうだ。(佐藤健二)

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