韓国の教育は病んでいるのか 自殺防止アプリ登場…学校現場でいったい何が?

2015.3.29 07:01

 IT大国の韓国。サムスン電子のお膝元だけあって情報端末の浸透は世界トップクラスにあり、アプリの利用の仕方もさまざま。ついには若者の自殺率を低下させるためのスマートフォン向けのアプリまで開発されたようだ。AFP通信によると、韓国教育省が明らかにしたアプリは、子供の自殺の危険性を示すサインを察知したら、親に警告を発する機能があるという。電脳社会の発達により、とらえにくくなった子供の思いを汲み取るのも、IT頼みの時代になったのだろうか-。

 入試シーズンに多発する自殺

 AFPによると、子供がスマホを使って、自殺に関連する言葉を検索すると親のスマホに警告が伝えられる。

 ソーシャルネットワークシステム(SNS)での書き込みやインターネット検索などWEB操作が対象になる。

 子供が感じているストレスを早期に察知することができれば、自殺予防につながるとの発想のようだ。アプリのインストールは義務付けられることはないが、普及への期待もあるという。

 韓国の自殺率は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最も高いことで知られているが、悲惨なのは若い学生も自殺に追いやられてしまうことだ。

 AFPによると、超難関の大学入試が行われる時期に最も多く、教育省の統計では、2009~2014年に878人が自殺。原因には家庭の問題のほか、成績、将来不安などが挙げられている。

 韓国の学校現場で何が起きているのか。

 保護者にひざまずく、教師も

 教師になったことを後悔している教師の割合がOECD加盟国中で最も高いのは韓国-。中央日報(日本語電子板)は2月にOECDの教育と学習に関する国際調査のデータを示し、韓国の教師のつらい境遇などを報じた。

 OECDのデータでは加盟国中、「後悔している」という教師の割合は韓国は20・1%で最も高く、加盟国の平均9・5%を大きく上回った。

 ほかの加盟国は20%に届かず、韓国より下位にはスウェーデン(17・8%)、ポルトガル(16・2%)、ブルガリア(14・6%)、チリ(13・9%)などが続いた。日本は7・0%だった。

 韓国の教師の給料は、平均賃金よりも高水準にあり、年金も充実している。それでも後悔している教師がいることについて、同紙は大学教授の意見として、教師の権威や公教育に対する信頼低下を指摘した。

 「教師たちが行政業務にあわせた無駄な仕事をたくさんしている。師匠としての意味を探しにくくなる」との有識者の見方を紹介。「授業より行政業務をうまく処理したほうが、昇進に有利だという雰囲気」との教員の声も伝えた。

 一方、教壇では、塾の授業と学校での授業の違いに戸惑う生徒もおり、教師の接し方に異論を唱える保護者から電話がかかってくることほか、生徒同士でいざこざが起きれば「弁護士事務所に依頼して訴訟する親もいる。校長が親の前でひざまずいたりする」(校長)と、殺伐とした保護者との関係のいったんが浮かぶ。

 スマホ利用時間は約4時間

 同紙が報じた民間調査によると、韓国の2014年(9月基準)の一日平均での音声通話を除くスマホ利用時間は219分(3時間39分)だった。スマホがはやり始めた2012年3月ごろの91分に比べて2・4倍になった。

 年齢別では20代の利用時間が一日平均281分で最長。続いて多かったのが「10代以下」で239分も費やしていた。

 子供たちは日ごろ、何を考え思っているのか。若者が4時間も向き合うスマホの中身ののぞきみれば、彼らの悩みも少しは分かってくるのかもしれないが…。

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