国の税収54兆円 専門家「毎年度の伸び見込めない」

2015.7.1 19:16

 平成26年度の国の一般会計の税収が53兆9700億円に上ることが1日、分かった。景気回復による企業の好業績に伴う給与や株主配当の増加などで法人税や所得税の税収が伸び、17年ぶりの高水準となる。政府は32年度の基礎的財政収支の黒字化達成に向け、高い経済成長による税収増を期待するが、専門家からは「税収の伸びが毎年度継続するのは見込めない」との指摘も出ている。

 政府は今年1月時点で、税収を51・7兆円と見込んでいたが、26年度の税収は2兆2000億円も上振れした。25年度決算と比べると7兆円の大幅増で、消費税率を5%に引き上げた9年度(53兆9400億円)を上回る水準だ。

 税目別で見ると、所得税(25年度決算は15・5兆円)は16兆8000億円で、当初の見込みよりも1兆円増加。法人税(同10・5兆円)は11兆円となり、5000億円上回った。昨年4月に税率を8%に引き上げた消費税(同10・8兆円)は16兆円で7000億円増えた。

 税収の上振れ分2兆2000億円や日銀納付金など税外収入6000億円の歳入増を踏まえ、26年度の国債の新規発行額を2兆円減額し、剰余金は1・6兆円となる。

 明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「景気回復期は赤字企業が黒字に転じて税金を払い、累進課税制度で所得税の税収弾性値が伸びやすいことも税収上振れの要因」と語る。

 政府は6月30日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で、名目国内総生産(GDP)成長率3%、実質で2%の高成長を達成し、基礎的財政収支の黒字化を図るとした。32年度に16・4兆円の収支改善が必要だが、そのうち高成長に伴う税収増で7兆円、さらに追加的な歳入増や歳出削減で9・4兆円を捻出するシナリオを描く。

 甘利明経済再生担当相は税収増に関し「成長のトレンドを絶やさないことが、より財政再建を現実的なものにしていく」と語るが、日本総研の河村小百合上席主任研究員は「中期的に税収の伸びが継続する状況は見込みにくいのではないか」と指摘する。

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