雇用950万人創出で家計10兆円増へ 財政諮問会議で民間提案

2016.1.21 22:01

 政府が21日開いた経済財政諮問会議で、民間議員は約950万人の雇用増加や賃上げを通じ、家計所得を10兆~14兆円増やす成長戦略案を示した。個人消費など内需の拡大とともに「1億総活躍社会」の実現につなげる狙いがある。会議では、景気回復による税収の増加分を「1億」関連施策に活用する議論も開始。平成29年4月に予定する消費税再増税時に導入する軽減税率の財源に充てるべきだとの声も多く、今後の調整が課題になる。

 安倍晋三首相は会議で「1億総活躍社会の実現には適切な安定財源を確保する必要がある。アベノミクスの成果をどう活用するかを考えてほしい」と述べ、関係閣僚らに具体的な検討に入るよう指示した。

 民間議員の提案は、政府が6月にまとめる成長戦略の再改訂版や「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」のたたき台となる。 具体的には、パート主婦の収入が103万円を超えると配偶者控除の対象でなくなる「103万円の壁」の解消や、賃金に応じて高齢者の年金受給額が削られる「在職老齢年金」の見直しなどを通じて、女性や高齢者の勤労意欲を高め、雇用を拡大することを提言。賃上げや最低賃金の引き上げと合わせ、10兆円以上所得を増やすと見込んだ。

 企業の投資拡大についても、民間人材をいかした官民ファンドの活用などを提案。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)発効を機に対日投資の環境整備を進め、海外から優秀な人材を確保することも盛り込んだ。

 会議では、甘利明経済再生担当相がアベノミクス効果による税収増を育児支援など1億総活躍社会関連の財源に回すことを提案した。28年度当初予算案の税収は第2次安倍政権が発足した24年度と比べて21兆円増える見通しで、国税のうち8%への消費税増税分を除く8兆5千億円の使途を話し合う。ただ、政府・与党内には税収増を軽減税率の財源のうち手当てできていない6千億円分に充てるよう求める意見もある。政府は骨太方針に使い道や規模などを盛り込みたい考えだ。

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