貿易黒字5年ぶり高水準 旅行などサービスが稼ぎ手 訪日客消費の取り込みカギ

2016.2.8 21:32

 平成27年の経常収支が22年以来5年ぶりの高水準となったのは、訪日外国人の増加による旅行収支の大幅な改善など、貿易収支に代わる新たな“稼ぎ手”の台頭が大きい。経常収支の黒字拡大に向け、2020年の東京五輪開催を追い風に、観光などサービス分野で、訪日外国人の消費の取り込みをさらに加速できるかがカギとなりそうだ。

 旅行収支の53年ぶりの黒字化を牽引(けんいん)したのは、中国人観光客を中心とした訪日外国人の拡大だ。平成27年は前年比約47%増の1973万人と過去最高を更新した。これに伴い国内の百貨店や家電量販、ホテル、レジャーなどでの外国人消費が増加。日本人が海外で使うお金より外国人が日本で使うお金の方が多くなり、旅行収支を大きく押し上げた格好だ。

 日本百貨店協会によれば、27年の全国百貨店の訪日外国人客数は前年比約2.6倍に拡大。外国人売上高は1943億円と前年より1200億円増加した。同協会の井出陽一郎専務理事は「訪日外国人が大きく減ることは考えにくい」と期待を寄せる。

 政府は今後、訪日外国人を年3千万人に増やすことを視野に入れる。訪日客の訪問先が地方にまで広がれば、地域経済の活性化も見込まれる。そこで外国人がお金をたくさん使えば、旅行収支の黒字はさらに膨らむことにもなる。

 経常収支の黒字は日本にどれだけ「稼ぐ力」があるかを示すバロメーターだ。

 2000年代前半は経常黒字のうち貿易収支の黒字が大半を占めた。だが、昨年は6千億円超の赤字となり、産業構造の変化が鮮明になった。「生産の海外移転や輸入依存度の上昇で、貿易黒字幅が膨らみにくくなったため」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)だ。

 経常収支の黒字は、先進国で最悪の財政赤字を抱える日本にとって、国債の信認維持のためにも欠かせない。貿易収支の抜本改善が見込みにくい中、新たな稼ぎ手の育成に向け、訪日客の受け入れ体制の整備加速など、国主導で対策を強化する必要に迫られている。

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