悲観ムード支配、続く負の連鎖 円高株安進行「悪材料に反応しやすく」

2016.2.13 06:45

 12日の東京金融市場では、前日の欧米市場の流れを引き継いで大幅な円高と株安が進む展開となり、アジア市場でも大半の株価が下落するなど、世界的な株安連鎖の様相を呈した。経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が大きく崩れたわけではないが、市場は悲観ムードに厚く覆われているため、「負の連鎖」に陥っている。

 「悪材料にとても反応しやすくなっている」。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、市場を取り巻く雰囲気についてこう語る。

 実際、悪材料には事欠かない。原油先物相場は11日に約12年9カ月ぶりの安値水準に落ち込み、中国経済の減速懸念もくすぶる。そして欧州では銀行の健全性への懸念が浮上した。海外発の悪材料が続出したことで市場心理は弱気に大きく傾いており、米国では投資家の不安心理を映し出すとされる「VIX指数」が同日、「中国ショック」時の昨年9月1日以来約5カ月半ぶりの水準に上昇した。投資家が、値下がりリスクのある株式を買うような動きには出にくい状況だ。

 米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は10日の議会証言で、「景気回復が期待外れならば、利上げをより緩やかなペースにするのが適切」と述べた。もし利上げペースが減速するのなら、本来は株式相場にとって追い風となる発言だ。

 イエレン議長の議会証言は市場に配慮した内容との受け止めだったにもかかわらず、世界経済の減速懸念が上回り、市場の悪い流れを反転させるには至らなかった。

 その後も世界的な株安は止まらず、12日の東京市場に株安が波及した。

 市場では、春節(旧正月)の大型連休を終えて15日から再開する中国・上海株式市場への警戒感も根強い。

 上海市場が休場に入った6日以降、各国の市場は大きく荒れた。その影響で上海市場で株安が進めば、再び「中国不安」という経路で市場の動揺が増幅しかねないとの懸念がある。

 このところ投資家は目移りするように悪材料に敏感になっている。世界経済は「それだけ不透明感が強まっている」(三井住友アセットマネジメントの市川氏)といえそうだ。(森田晶宏)

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