政府・日銀「警戒モード」入り 東証1万5000円割れ G20の政策協調が鍵

2016.2.13 06:40

 中国経済の減速に加え、頼みの米国まで変調を来すのか。世界経済が総崩れしかねないとの不安心理から、12日の東京金融市場で日経平均株価は約1年4カ月ぶりに1万5000円を割り込み、日銀が2014年10月に追加金融緩和を決める前の水準に逆戻りした。外国為替市場では円相場が対ドルで大幅続伸、これを受けて安倍晋三首相と日銀の黒田東彦総裁が緊急会談するなど政府・日銀は“警戒モード”に入った。金融市場の動揺が実体経済に波及しかねない事態に、市場では再び日銀が動くとの観測も出てきた。

 首相と緊急会談

 「政府と日銀が一体となって、連携を取っていくのは当然だ。緊張感を持って、経済再生に全力で取り組む」

 菅義偉官房長官は12日の記者会見で、安倍晋三首相と日銀の黒田東彦総裁が昨年9月25日以来、4カ月半ぶりに会談したことについてこう強調した。

 12日の平均株価の終値は休日前の10日終値比760円78銭安の1万4952円61銭。平均株価は2012年12月の第2次安倍政権発足から昨年の最高値(2万868円)まで1万円余り上昇したが、5900円程度下落して上昇幅の半分以上を失った。

 黒田総裁は安倍首相との会談後、「金融市場の動向をしっかり注視し、必要と判断すれば躊躇(ちゅうちょ)なく対応する」と強調する一方、首相から金融政策への要望は「特になかった」と言葉を濁したが、「アベノミクス」の信任が揺らぎかねない円高株安進行に首相官邸の緊張感が高まっているのは間違いない。

 このため、市場では「日銀は企業心理を悪化させる急ピッチの円高・株安を放置せず、早々にマイナス金利幅を広げる」との観測が急浮上している。

 バークレイズ証券は12日、追加緩和予想をこれまでの4月から3月に前倒しした。森田京平チーフエコノミストは「円高を食い止めるため、マイナス金利幅を欧州中央銀行(ECB)と同じ0.3%に引き下げる」と見込んだ。

 日本に先んじてマイナス金利政策を導入した欧州では、スウェーデンが17日からマイナス金利幅を1.1%から1.25%にする。野村証券は「日銀もマイナス1%程度までは引き下げる可能性がある」と分析した。

 黒田総裁は12日の衆院財務金融委員会で、市場の混乱は「マイナス金利が影響したとは全く考えていない」と発言。金融機関に悪影響が及ぶとの批判に対しても、「利ざやの縮小は否めないが、経済が立ち直れば、収益は改善する」とあくまでマイナス金利政策の“正当性”を主張している。

 中国の元安誘導懸念

 一方、中国・上海で26日から開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、各国は市場安定に向けて政策協調を検討する見通し。麻生太郎財務相は12日の閣議後の記者会見で、「昨今の金融市場の状況を踏まえた政策協調をG20で検討したい」と表明した。

 日米欧の先進国に中国やインドなどの新興国が加わるG20で、各国は結束を示して市場のリスク回避姿勢を和らげたい考え。日本は、原油安で打撃を受けている資源国経済の安定化や、過剰設備などの問題を抱える中国経済の構造改革を提起する見通しだ。

 ただ、G20で議長国を務める中国は春節(旧正月)連休明けにも追加金融緩和に動くとの観測があり、一段の人民元安と円高を招く可能性もある。他国にも輸出に不利な自国通貨高は避けたいとの思惑があるほか、市場には欧州の銀行の健全性に対する疑念も強く、株安と円高の流れが反転するかは予断を許さない。

閉じる