リチウム電池、供給不足に 新エネ車好況 原材料価格、前年の3倍

2016.3.29 05:00

 中国では今年に入り、炭酸リチウムの価格が(1トン当たり)ほぼ毎週約1000元(約1万7420円)のペースで上昇し、今月下旬までに値上げ幅は累計23%に達している。

 新エネルギー車市場の好況でリチウムイオン電池産業チェーンも健闘中だが、原材料価格の上昇と粗利率の低下で、リチウムイオン電池のセル生産企業は苦境に陥っている。

 リチウムイオン電池の原材料価格は2015年から上がり始めた。同年末には値上がり圧力の緩和を目指し価格調整が行われたものの、多くのセル生産企業は製品価格を引き上げた。一部の原材料サプライヤーとメーカーは今後も値上げを決めており、現状から10%増となる可能性もある。

 投資コンサルティング大手、中投顧問のエネルギー産業研究員、宋智晨氏によると、春節(旧正月、今年は2月8日)以降5週間足らずの間に炭酸リチウム価格は4回も上昇、値上げ幅は毎回5000~1万元。水酸化リチウムも値上がりが続いている。今回の値上げは主に川下市場の生産能力の段階的緩和によるもので、炭酸リチウムや水酸化リチウムの需要が増え続け、市場全体が供給不足になっている。

 炭酸リチウム価格は15年年初の1トン当たり4万元から、今年1月には12万元となり、3倍の値に達した。今年4~5月の先物価格は15万元の値がついている。また電解液やセパレーターの価格も上昇している。

 原材料価格の高騰で、多くの電池メーカーの生産計画に影響が出ている。業界関係者によると、一部の企業では数カ月にわたる生産停止に追い込まれ、生産の計画を先延ばしする企業も出ている。こうした状況で、メーカー担当者はリチウムイオン電池産業全体の発展に影響がおよぶことを懸念している。

 宋研究員は「中国政府は現在、(コバルト、マンガン、ニッケルを組み合わせた)三元系正極材料を使用したリチウムイオン電池搭載のバスなどで、安全性のリスク評価を行うことを検討中で、評価終了までは同電池搭載車種目録が作成できない。これが間接的にリン酸鉄リチウムイオン電池価格の値上がりをもたらしている」として、早急に三元系正極材料を使用した電池の生産を回復させるよう訴えている。(中国経済網=中国新聞社)

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