日韓ビジネス連携強化 東南アジア狙う 「前向き」期待も財閥リスク

2016.10.13 06:25

 日韓の経済界が関係を深めている。経団連の榊原定征会長と10日に会談した韓国の朴槿恵大統領は両国関係の先行きに期待を表明、企業は東南アジアを視野にビジネス連携を強化し商機拡大をにらむ。だが財閥を優遇してきた韓国政府の施策は、1社の不祥事が社会経済を揺るがしかねないリスクもある。企業連携がどれだけ増えるかは未知数だ。

 「昨年12月の慰安婦問題の合意以降、両国関係は未来志向に発展している」。朴大統領は訪韓した日本の財界人らを前に、明るい見通しを語った。韓国の企業トップらで構成する全国経済人連合会(全経連)の許昌秀会長も、10日の経団連との会合で「今は関係が改善に向けて進み非常にいい時期だ」と語った。

 日韓の経済界が良好な関係を望むのは、ともに少子高齢化で国内市場が縮小し、新興国などのマーケットを開拓しなければ成長維持が難しいという共通事情がある。

 経団連と全経連は会合終了後、インフラや資源開発で両国企業が協力して第三国市場を開発することを目指す共同声明を発表、朴大統領も「前向きに進めてほしい」と笑顔を見せた。

 だが韓国企業との共同事業には慎重な日本企業が少なくない。韓国政府はサムスングループやロッテグループなど財閥を後押しすることで経済成長につなげてきた。副作用として残ったのはオーナー一族の力が強くなり、そこが不祥事や内紛で揺らげばがらりと経営方針が変わるリスクだ。

 財閥が、グループ内に部品メーカーなどを抱え込んだ結果、中小企業が十分に育っておらず産業構造が未熟だとの指摘も多い。バッテリーの欠陥が判明したサムスン電子の新型スマートフォン生産停止も、韓国経済へ影響を与えそうだ。

 「ひと言で言うと統治能力が欠けている。呼び掛けがあったからといって手放しで連携することはない」。大手商社の幹部は冷ややかに語った。

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