サムスン“火噴きスマホ”だけではない韓国企業の信用問われる事態 現代自動車にも欠陥疑惑

2016.10.20 06:30

 世界を仰天させた“火噴きスマホ”騒動が収まらない。バッテリーの欠陥による発火トラブルが相次ぎ報告された韓国サムスン電子の新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」。同社は米国や韓国でリコール(回収・無償修理)を余儀なくされたが、部品交換されたスマホからも煙が上がったとの報告が寄せられ、ついに「謝罪」のうえに払い戻しにまで追い込まれた。だが韓国企業の問題はこれだけではない。韓国メディアによると、現代自動車のエンジンに欠陥が潜む可能性が指摘され、韓国当局も調査に乗り出したという。もはや韓国企業全体の信用が問われる事態だ。

「煙が出た!」航空機の乗客が避難

 「ご心配をお掛けしたことを深くおわびします」。ノート7を8月に発売してからわずか2カ月での販売停止と謝罪に追い込まれたサムスン電子。ノート7の発売直後から発火の報告が寄せられ、9月にリコールに踏み切るも、驚くことに代替品でも「煙が出てくる」という異例のトラブルが報告され、ダメージは決定的となった。

 これまで発火原因としていた「バッテリーの欠陥」以外にも問題がある可能性があり、調査には時間がかかりそうだ。朝鮮日報(日本語電子版)は「スマホの設計自体にミスがある可能性が取り沙汰されている」と報じた。

 サムスンはノート7の生産・販売停止に伴う損失が、2016年10~12月期以降、計3兆5千億ウォン(約3200億円)程度に上るとの推計を発表した。16年10~12月期に2兆5千億ウォン、17年1~3月期に1兆ウォンほどの損失を見込む。

 ロイターは、ノート7の販売停止で、サムスンが被る機会損失(本来稼げるはずの収益の機会を逃すことによる損失)は最大1900万台、約170億ドル(約1兆7500億円)相当にのぼるとのアナリストの見方を伝えた。

スマホなのに…もはや爆発物扱い

 サムスンが受けるブランドイメージの低下は避けられない情勢だが、ユーザーや関係者が被った迷惑はかなり大きい。

 英BBCによると、米ケンタッキー州の空港を離陸しようとしていた航空機内で「電子機器から煙が出ている」と乗客から連絡があり、乗客全員が避難。この“発煙スマホ”はノート7で、乗客の説明では、サムスンがリコールを発表したあとの9月21日に購入。「改修されたはず」の製品だった。

 スマホなのに、ノート7は、爆発物扱いである。

 米運輸局は14日、米国発着の航空機へのノート7の持ち込み禁止を発表。日本の国土交通省も15日付で、国内航空会社に対して、機内持ち込みを禁止するよう指示した。

手袋で梱包を

 さらに、スマホの回収にユーザーは手を煩わされている。

 携帯端末の業界関係者らが参加するブログサイトによると、リコールで店舗への持ち込みではなく、輸送でノート7を返却する場合、防火対応の厳重な特殊段ボールの箱が届けられたという。発火しても燃え広がらないようにノート7を入れる箱の内側はセラミック繊維が練り込まれ、作業を行うための専用の手袋がついている。まるで爆弾処理のようだ…。

 返品回収台数は、販売済み製品のほぼ全量にあたる250万台、米国や韓国など10カ国・地域に及ぶとみられ、消費者への影響は多大だ。

現代自は大丈夫?

 韓国を代表する世界企業、サムスンで起きた不祥事は、韓国経済の大きな懸念材料だ。サムスン株はノート7の販売停止の発表後に急落、株主を不安に駆り立てている。

 また、ここにきて今度は韓国・現代自動車のエンジンの欠陥の可能性が指摘されるという新たな問題が浮上してきた。

 朝鮮日報(日本語電子版)は、自動車安全研究院が現代自の「シータ2エンジンに対する製造欠陥調査を開始した」と報じた。同紙によると、米国では、「シータ2エンジン」を搭載した車をめぐる集団訴訟で、約88万台に対して無償のエンジン点検や保証期間の延長で合意した。韓国でも同じエンジントラブルが起きないかなどの調査に着手したという。

 現代自は、米国の製造工程に問題があったとの立場だが、試験でエンジン停止などの欠陥が発見されれば、リコールが現実味を帯びる。

 韓国の大企業をめぐっては、最近でも海運大手、韓進海運が破綻し、多くの荷物が、陸上に荷上げできなくなり、米国のクリスマス商戦への影響が懸念されたばかり。相次ぐ有名企業の問題は、韓国企業全体への不信を高めかねない。

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