ネット接続車セキュリティー機関を設立 奇虎360など複数業界協力

2017.2.22 05:00

 ■遠隔操作や情報漏洩防止

 中国のセキュリティーソフト大手、奇虎360科技は、上海で昨年11月に開催した情報セキュリティー技術関連の大会で「360コネクテッドカー(インターネット接続車)セキュリティーセンター」を設立したと発表。これは、大学や自動車・部品メーカーなどが共同で立ち上げたもので、ネット接続車のセキュリティーを管理する中国初の複数業界協力機関となっている。

 ◆ハッキングの危険性

 インターネットや人工知能(AI)、無線ネットワーク、クラウドコンピューティング、ビッグデータといった技術の応用が進むに伴い、自動車はスマート化やネットワーク化が進み、全てのものがインターネットにつながる時代の代表的なスマート端末となった。現在、自動車には25から200種類のECU(電子制御ユニット)が備わっており、高級乗用車には144のECUが接続され、プログラムコードは6500万行、自動運転車になると2億行を超える。4、5年後には自動車1台が毎日約4000ギガバイトのデータを生み出すという。

 今回設立されたセキュリティーセンターの専門家、劉健皓氏は「自動車で使用されるコンピューティングやネット接続のシステムは、既存の仕組みを使っており、システム従来のセキュリティー欠陥も引き継いでいる。自動車にECUやその接続部分が増えるにつれ、ハッキング箇所は大幅に増加。特に通信網がインターネットに接続してクラウドにアクセスするようになってからは、計算、制御、センサーの各接続部分にセキュリティーの弱点があり、ハッカーに攻撃される可能性が高まっている」と指摘する。

 実際、自動車のハッキング問題は既に発生している。米国のコンピューターセキュリティー専門家2人が米FCAUS(旧クライスラー)の「ジープ」ブランド車でセキュリティー実験を行ったところ、ハッキングで外部から遠隔操作できることが発覚。同社は2015年7月に140万台のリコール(回収・無償修理)を実施した。

 同年8月には中国の自動車メーカーのクラウドサービスにも脆弱(ぜいじゃく)性が発覚、情報漏洩(ろうえい)や遠隔操作の可能性が指摘された。

 奇虎360の360自動車セキュリティー実験室も昨年8月、初めて米テスラ・モーターズ車のセンサー部分の弱点をついて自動運転システムへの進入に成功している。

 ◆米独など対応進める

 こうした状況に危機感を抱くテスラや米ゼネラル・モーターズ(GM)、独フォルクスワーゲン(VW)などは対策として、セキュリティー技術者の公募やセキュリティー専門会社設立、専門機関との提携促進など対応を進めている。

 国としても対策に乗り出している。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は昨年11月、「自動車サイバーセキュリティーガイド」を発表、メーカーのネット接続車向けサイバー攻撃対策を支援する。

 中国でも国務院(内閣)が策定した「中国製造2025」で、自動車情報セキュリティーを重要問題として研究。昨年10月には「省エネ・新エネルギー車技術ロードマップ」が発表され、その中で情報セキュリティーを重要部分と位置付けて、関連技術の明確なビジョンを打ち出した。

 こうした中、中国のサイバーセキュリティー最大手である奇虎360は13年から自動車情報セキュリティー分野に参入。これまでに北京航天航空大学や浙江大学、テスラ、長安汽車、比亜迪(BYD)、長城汽車、独自動車部品大手ロバート・ボッシュ、自動車セキュリティーの米ビジュアル・スレットなどと協力または共同研究を進め、多くの成果を上げている。(経済参考報=中国新聞社)

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