東ティモールと豪、国連調停 資源争奪 境界画定で火花

2017.4.11 05:00

 東南アジアの小国、東ティモールと、オセアニアの大国、オーストラリアの海洋境界画定に向けた国連調停が進められている。両国周辺の海底には豊富な石油や天然ガスが眠る。資源を得るか失うか-。境界画定は火花を散らす争奪戦の様相だ。

 「(国連に調停を求めるのは)残された唯一の手段だ」。東ティモールのデアラウジョ首相は昨年4月にこう表明し、国連海洋法条約に基づく調停を国連に申請した。

 両国の境界紛争には複雑な経緯がある。東ティモール独立などに際し、両国は境界を画定しないまま資源開発に関する条約を2003年と07年に発効させた。07年条約では境界画定交渉を50年間棚上げした上で、400億豪ドル(約3兆3412億円)相当の資源が眠るグレーターサンライズガス田の収入を折半すると規定、開発による実利を優先した。

 東ティモールがここに来て棚上げを撤回し、国連に調停を求めたのは、既存油田が底を突きつつあり、新たな収入源の確保を迫られているためだ。

 02年に独立した東ティモールは、世界で最も貧しい「後発発展途上国」の一つ。主だった産業がなく、国家財政の約9割を資源収入に依存する。だが15年末にキタン油田を掘り尽くし、唯一稼働しているバユ・ウンダンガス田も24年には枯渇する見通しだ。

 東ティモールは同国の初代大統領で後に首相も務めた独立の英雄、グスマン氏を交渉責任者に据え、「国の存亡をかけた」(外交筋)調停に臨む。今年1月には07年条約の破棄をオーストラリアに正式通知。条約は4月に失効するため、オーストラリアも交渉を受け入れざるを得なくなった。

 調停は今年後半まで続くが、歩み寄りは容易でない。東ティモールは両国の中間線が境界で、グレーターサンライズの多くが自国側に属すると主張。オーストラリアは中間線を越えて張り出した大陸棚沿いとの立場で、隔たりは大きい。

 しかし、境界画定が決着できなければ、リスクを恐れる企業はグレーターサンライズの開発に二の足を踏み、両国ともに収入は得られない。国の大小を乗り越え、実りある解決策を見いだせるかが注目される。(ジャカルタ、シドニー 共同)

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