【ライフデザイン】(上)彼らは「買わない」のか「買えない」のか? 若者が消費に消極的なワケ

2017.6.6 05:47

 □第一生命経済研究所 主席研究員・宮木由貴子

 国内総生産(GDP)の6割近くを占める個人消費を活性化するべく、さまざまな取り組みが行われている。2月に始まったプレミアムフライデーや、キッズウイーク創設案など、行政も絡んだキャンペーンが企画・展開される中、そもそも消費者は「買わない」のか「買えない」のか、その理由についても考える必要がある。

 以前は消費の牽引(けんいん)役として期待が大きかった若者が今はあまり期待できない。一般に第1子の出産で急に家計を引き締めるが、一昔前の若者はそれまでは比較的自由に消費をしていた。

 それは、今の若者の所得が低いからだろうと思われるかもしれない。しかし、20代の平均収入はこの10年でも大きく減ったわけではない。にもかかわらず若者の消費性向が低下傾向にあるのは「不況感」からくる将来不安によるところが大きい。

 実際に、第一生命経済研究所で行った「若者の価値観と消費行動に関する調査」によれば、現代の若者は非常に「守り」の意識が強い。「将来を予測できるような安定生活をしたい」「将来のことを考えると、今、お金を使うこと全般に積極的になれない」「将来のことを考えて備えにお金を回したい」といった意識が高い中、「安心・安全な生活のためには積極的にお金を使う」など、将来を見据えリスクに備える意識を持っている。

 一方で、若者の保守性のほかに気がかりな結果もみられる。「モノや情報が多すぎて買えないことが多い」との回答が高いことだ。インターネットショッピングの場合、商品やサービスの種類は非常に多様で選択肢の量は計り知れない。加えて若者は消費に際して親や友人に相談したり、ネットやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上のデータを参考にしたりと情報収集に余念がない。

 商品・サービスの選択肢の多さと、それに付随する情報の多さに、消費経験の浅い若者は買う・買わないの基準を見いだせずに、「何を買ったらいいのかわからない」という状況に陥っている可能性があるのだ。

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