「五輪宝くじ」に他の自治体が反発 東京都の提案に「手順違う」

2017.8.7 06:00

 2020年東京五輪・パラリンピックの開催費用のうち、分担が決まっていない東京都外の競技会場の運営費約350億円を、宝くじの収益で一部賄うと都が提案したことが波紋を広げている。他の開催自治体は財源確保策の一つと理解しつつも「まずは経費の内訳や分担の協議」と都の進め方に反発している。

 「350億円の中身を詰めず、その額を宝くじでと要請するのは手順がおかしい」。札幌市の秋元克広市長は7月27日の記者会見でかみついた。

 同じ日、盛岡市で開かれた全国知事会議で、小池百合子都知事は宝くじを五輪費用に活用することに理解と協力を求めた。会議後には報道陣に「今精査をしている開催自治体のさまざまな費用や、聖火リレーなどを含む形で宝くじを有効に活用する」と表明した。

 五輪関連では、既に昨年から「東京2020大会協賛くじ」が発売されており、20年度までの収益約126億円を大会経費に充てる予定だ。都は350億円も含めた財源確保のため、さらなる発行を検討している。

 ただ、発行には都道府県と政令指定都市でつくる全国自治宝くじ事務協議会の了承が必要なため、都は他の開催自治体に連名で要望書を出すことを提案した。

 これに対し、埼玉県の上田清司知事は今月1日の会見で「財源は都と大会組織委員会が責任を持つことで(要望書は)都が単独で出すのが筋。連名にすると責任を担うことになりかねない」と拒否する考えを示した。

 宝くじは売上額のうち、当せん金や経費を除いた約4割が都道府県と政令市に分配され、道路補修や少子高齢化対策などの公共事業費に充てられている。販売額は年々減少傾向にあるといい、埼玉県の担当者は「五輪で新たに発行しても、全体の販売額は増えるとは考えにくい。開催地はまだ五輪で享受する部分があるが、他の自治体には、収益金が減ることへの不満や心配があるのではないか」と指摘した。

 350億円と試算されるのは都外会場の警備費や輸送費など。5月31日、総額1兆3850億円の大会費用のうち、都と組織委が6000億円ずつ、国が1500億円を負担すると決まった際も、350億円は開催自治体が負担に反発し、結論が先送りされた経緯がある。

 千葉県の森田健作知事は「各自治体が都に疑心暗鬼になっていた。またもめ事が起きないために、役割や経費を明確にすることが大事。それから財源だ」と話す。

 福島県の内堀雅雄知事も「財源確保は重要なので連名での要望を了解したが、費用の詳細が整理されていない。議論を進めることが大前提だ」と注文を付けた。

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