消費増税控え高まる補正圧力 景気冷やさずどう財政健全化…試される本気度

2018.1.24 06:13

 政府が23日示した経済財政に関する中長期試算で基礎的財政収支(PB)の黒字化が2年ずれ込むと試算したのは、2019年10月に予定される消費税増税の増収分の使途変更に伴い、借金返済が後回しになるためだ。その上、消費税増税後の消費の減退を防ぐために、毎年のように大型補正予算の編成が続けば、黒字化の達成はさらに遅れかねない。景気を冷やさずに財政健全化にもどう取り組むのか。政権の本気度が試される。

 政府は現行の財政健全化計画で、政策経費を主に税収でどれだけ賄えるかを示すPBを20年度に黒字化する目標を掲げていた。PB赤字は収入よりも支出が多く、借金が増える状態。国と地方の借金が1000兆円を超える中、その膨張を防ぐには一刻も早い黒字化が欠かせない状況にある。

 だが安倍晋三首相は昨秋に衆院解散を表明した際、消費税増税に伴う増収分について、借金返済に回す分の一部を子育て支援に振り向ける方針を打ち出した。それにより安倍首相は20年度のPB黒字化達成が「不可能になった」と認めた。

 政府は今回の中長期試算を踏まえ6月にも策定する新たな財政再建計画で、PB黒字化目標を後ろ倒しする方向で調整する。麻生太郎財務相は「財政健全化の旗は決して降ろさない」とするものの、政権内では財政再建の優先度が後退しているのも事実だ。

 背景にあるのが消費税増税。増税後の消費後退を防ぐため、与党内では大型の補正予算を切れ目なく編成すべきだとの意見も根強い。本来は借金の返済に回る分が、景気対策を理由に補正予算の財源に振り向けられればPB黒字化はさらに遠のく。

 政府は昨年、財政再建の指標として国内総生産(GDP)に対する債務残高比率の引き下げも重視する方針を示した。この比率はGDPが増えれば下がるため景気優先の財政出動の根拠となる可能性もある。

 25年には団塊世代が全て75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護費が急増する。景気への目配りは当然必要だが、歳出の徹底改革を通じた財政健全化との両立も持続的な経済成長のために欠かせない。(中村智隆)

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