日本、米国にTPPへの復帰説得へ 材料乏しく交渉は手探り

2018.7.19 22:51

 米国を除く環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の19日の首席交渉官会合では速やかな参加国拡大で一致したが、日本は近く開く日米の新しい通商協議(FFR)で米国にTPPへの復帰や、検討している自動車輸入制限の翻意を促す方針だ。ただ、「自国第一主義」を掲げるトランプ米政権との交渉材料に乏しく、日本は難しい対応を迫られる。

 「自動車輸入制限が発動されれば、FFRは意味がなくなる」。19日開いたTPP11の首席交渉官会合を前に、日本政府の交渉筋は焦りの表情を浮かべた。

 日本はTPPのほか、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)にも署名し、発効に向けて準備を進めているが、TPPの発効は年明け、日欧EPAの発効は来年前半が見込まれる。輸出機会を失いかねない米国に対する牽制(けんせい)にはなるものの、TPP脱退を公約に掲げ、貿易赤字削減を強く求めるトランプ米政権との取引材料という意味では「即効性に乏しい」(政府関係者)のも事実だ。

 トランプ米大統領は自動車輸入制限について、11月の中間選挙前にも結論を出すとみられる。いったん発動されれば、「世界経済に与える悪影響はリーマン・ショック級」(経済産業省幹部)との見方もある。

 このため7月下旬にも開くFFRでは、自動車輸入制限回避への道筋も探る。

 日本は世界貿易機関(WTO)への提訴も視野に交渉に臨むが、WTOの裁定には数年かかることも多く、米国に翻意を迫る決定打とはなりにくい。そもそも「トランプ米政権はトップダウンで、下からの議論の積み上げがやりにくい」(政府関係者)とされる中、どこまで協議が進展するかは未知数だ。

      (大柳聡庸)

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