11年半ぶり逆イールド発生で強まる景気後退懸念 過去には…?

2019.3.25 18:05

 東京株式市場が25日急落したのは米債券市場で長期金利の指標となる米国債10年物の利回りが3カ月物を11年半ぶりに下回る長短金利の逆転現象「逆イールド」が起きたことがきっかけだ。歴史的に景気後退の予兆とされ、過去30年で3回あった後退局面でいずれも発生した。世界経済の先行き不安が強まり市場関係者の混乱に拍車がかかっている。(田辺裕晶)

 金利は一般的に貸し出しから返済までの期間が長いほど貸し倒れリスクが大きくなるため、高くなる。これに対し、短期金利が長期より高くなり、長短期の金利をつないで描く利回り曲線(イールドカーブ)が通常と比べ逆転する「異常事態」を逆イールドという。

 原理はこうだ。好景気が終盤に差し掛かると中央銀行は過熱感が出るのを防ぐため短期の金利を引き上げようとする。ただ、投資家は将来の景気後退に伴う金融緩和を見込んで償還期間の長い国債を買うため長期の金利が低下(価格は上昇)し、短期が長期を上回ることがある。

 22日の米債券市場では、2007年8月以来の逆イールドが発生。実は昨年12月3日にも米国債5年物と2年物の金利逆転が起きているが、今回は伝統的に長期金利の指標となる10年物の利回りが3カ月物を下回ったため、市場関係者の動揺を招いた。

 逆イールドが「凶兆」とされるのは発生した1~2年後に米国が景気後退期に入るケースが多いからだ。

 特に、10年物の利回りが2年物より低くなると「本物」とされ、最近では05年末から07年半ばにかけて頻発した後、08年9月のリーマン・ショック(後退期は08年1月~09年6月)につながった。ITバブルの崩壊(01年4~11月)や、湾岸危機と重なった不動産バブル崩壊(1990年8月~91年3月)でも事前に逆イールドが発生している。

 長期金利は住宅ローンなど貸出金利の指標となり、短期金利は預金金利の参考となる。長短金利の差がなくなれば銀行は利ざや(貸出金利と預金金利の差)を取れなくなり、貸し出しを渋るようになる。これが企業の倒産や失業者の増加に結びつくといわれている。

 第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは、足元では銀行の貸し出し態度の厳格化など「景気後退を招くメカニズムは働いていない」と指摘する。ただ、市場の混乱が実体経済に波及し、不況を引き起こす可能性は否定できず、「リスクを軽視してはならない」と呼びかけている。

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