総裁選ドキュメント 推薦人からみえる陣営の狙い、人間模様

2020.9.8 21:05

 自民党総裁選に立候補した石破茂元幹事長、菅義偉(すが・よしひで)官房長官、岸田文雄政調会長は8日、届け出に必要な20人の推薦人名簿を提出した。3氏の推薦人名簿を見ると、各陣営の狙いや人間模様が見えてくる。

 「えげつないな」。総裁選を優位に進める菅氏の推薦人代表に浜田靖一元防衛相の名前があるのを見た自民党関係者はこうつぶやいた。浜田氏は、平成24年の総裁選では石破氏を支持。菅氏の陣営では当時、浜田氏と行動をともにしていた小此木八郎元国家公安委員長も選挙対策本部長に就いている。

 名簿には、派閥色を薄め、菅氏のこだわる「無派閥」を前面に出す意向がにじむ。派閥別でみると、細田派(清和政策研究会)が最多の5人で無派閥は竹下派(平成研究会)と並んで2番目に多い4人。麻生派(志公会)と二階派(志帥会)が3人で石原派(近未来政治研究会)1人。二階派の平沢勝栄広報本部長、石原派の坂本哲志元総務副大臣ら各派が初入閣を希望する議員の名前も並んだ。

 衆参の内訳は、衆院が14人で参院は6人。当選回数は衆院が2~9回、参院は2~4回と若手からベテランまでそろえてバランスにも配慮した。女性は3割に当たる6人で、安倍晋三政権が掲げた「女性活躍推進」を継承する姿勢を示した。

 石破氏の推薦人は15人が石破派、5人が竹下派や無派閥、谷垣禎一前幹事長が特別顧問を務める谷垣グループ(有隣会)のメンバーだ。石破派以外では前回に続き中谷元(げん)元防衛相や村上誠一郎元行政改革担当相らが名を連ねるが、前回は推薦人となった竹下派参院議員の名前はない。女性議員がいないのも特徴的だ。

 岸田氏の推薦人は16人が岸田派、4人が谷垣グループ。父・加藤紘一元幹事長の「加藤の乱」をきっかけとした派閥の分裂で、岸田派と疎遠になっていた加藤鮎子衆院議員が推薦人となった。一方で、岸田氏は党員の支持に広がりを欠いており、地方で人気のある石破氏を上回るためには議員票上積みに向けて他派の切り崩しが課題となりそうだ。(沢田大典)

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