【スポーツ経営放談】まるでギリシャ!危機感足りぬJリーグ
2012.2.8 05:00更新
欧州の債務危機は収まる気配がない。今は病人が小康を保つがごとき状態が続いている。国債の元本削減をめぐるギリシャ政府と民間債権者との交渉などの行方を、欧州主要国が固唾をのんで見守っている。全ての債権者が債務削減に応じない場合、ギリシャの債務不履行は避けられない。そうなれば、即座にスペインやイタリアが次の標的となり、欧州の金融は大混乱に陥るだろう。
そもそも、2008年秋のリーマン・ショック後に景気浮揚策として各国政府がとった大型の財政出動、その結果としての膨大な国家借入金の増加が債務危機の元凶だから、各国が債務削減に真剣に取り組まない限り、根本的解決を見いだすことは難しい。国家財政の改善には増税や公共投資削減が欠かせず、国民の犠牲が伴う。日本も同じ状態だから、今後われわれの日常生活が窮屈なものになるのは避けられそうもない。
欧州各国と同じく、サッカーJリーグも収支改善を迫られることになった。13年シーズンから「クラブライセンス制度」が始まるからだ。この制度はドイツで最初に導入された後、欧州サッカー連盟や国際サッカー連盟(FIFA)、アジアサッカー連盟が採用し、ついにJリーグも導入を決定したのだ。この結果、J1とJ2の40クラブに、JFLに所属するJリーグ準加盟の2クラブを加えた42のクラブが、Jリーグが定める財務基準を守る義務を負うことになった。
財務基準の内容は厳しい。12年度から3期連続で最終損失を計上したり、14年度以降の決算で債務超過に陥った場合、プロのクラブとしての「ライセンス」が剥奪される。収益力の低いクラブはギリシャ同様、収支改善が待ったなしになった。
サッカーの世界は、FIFAを頂点に大陸ごとの連盟と国・地域の協会がピラミッド状に組織を形成し、その下に各国のプロリーグが存在する構造になっている。すなわち、サッカー界はプロリーグの上にアマチュア組織が位置し、アマチュア組織が定めたルールをプロリーグが守る義務を有しているのだ。だから、上部組織はJリーグに属する各クラブの台所事情などお構いなしにルール適用を迫ることになる。
基準の順守は容易ではないが、Jリーグのクラブがパニックに陥ったといった話は聞かない。Jリーグ公表の10年度クラブ個別情報によれば、J1とJ2のクラブのうち18のクラブが最終損失、そして10のクラブが債務超過なのに不思議なことだ。別の見方をすると、個別努力では収支構造の改善は無理とあきらめているのだろうか。
Jリーグの場合、リーグが各クラブに代って得る全国市場からの収入がクラブ収入全体の10%にとどまる状態が5年以上も続いている。このことは、収支を整えるためにクラブは地元の市場で90%を稼がねばならないことを意味する。
しかし、実際のチケット販売は満足できる域に達しておらず、「地域密着」の営業活動を掲げる割には観客動員が伸びていない。スタジアムの平均収容人数は3万1012人なのに対し、11年度のJ1の18クラブの平均観客数は1万5797人。観客席は半分しか埋まっていない。
創立から20年になるが、Jリーグは地方市場と全国市場の両立が依然できていない。リーグもクラブも経営努力を怠り、結局、そのつけを出資会社に回す体質になってしまっているようだ。そのため、ライセンス制度の導入にも反応が鈍くなっていると推察せざるを得ない。
ギリシャを旅行した人によれば、新聞やテレビの報道と異なり、ギリシャ人の生活は危機感を持ち併せていないかのように、金融危機の前とほとんど変っていないそうだ。Jリーグもギリシャ人同様、危機感を失ってしまったのだろうか。(帝京大経済学部教授・大坪正則)