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【滋賀発 元気印】叶匠壽庵 “農工一体”の郷から和菓子文化発信

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【滋賀発 元気印】叶匠壽庵 “農工一体”の郷から和菓子文化発信

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 滋賀県・瀬田川沿いの自然美あふれる「寿長生(すない)の郷(さと)」。果樹栽培と和菓子生産を一体化したこの拠点から「和菓子文化を発信しよう」とするなど、さまざまな取り組みを行う叶匠壽庵(かのうしょうじゅあん)。芝田冬樹社長は「創業数百年の老舗が並び立つ和菓子業界では新参だが、その真逆の“青春企業”としての強みを経営に生かしたい」と若手社員による挑戦に期待を示している。

 ◆里山の風景維持

 創業は1958年。大津市の公務員だった芝田清次氏が同市内の長等地区にあった自宅を工場として和菓子づくりを始めた。82年には創業者の長男、清邦氏が2代目社長を継ぎ、2012年、現社長の冬樹氏が3代目に就任した。

 「寿長生の郷」は、この間の85年に先代の清邦氏が造営した。日本の里山の風景をそのまま残し、自然美あふれる約20万8000平方メートルの広大な敷地に本社をはじめ菓子工場、茶席、川床テラスカフェ、食事処、イベントホール、売店などが並び建つ。周囲は自慢の梅林のほか、およそ800種にも及ぶ自生植物が四季折々に美しい花を咲かせ、実をつける。

 郷を建設した狙いは“農工一体”のモノづくりだ。「老舗との差別化戦略を展開するに当たり、四季を織りなす自然の美しさを生かした和菓子づくりを目指した」と芝田社長は先代の考えを説明する。

 しかし3代目を継いだ時点で「先代の意向は全うされていない」と判断、もう一度原点に立ち返ることと、合わせてその作業に若い集団の知恵を結集することを打ち出した。

 いまその方針の下に取り組んでいるのが、「寿長生の郷活性化プロジェクト」、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールとの「公式スポンサー契約」、そして「草津店開設プロジェクト」だ。

 郷活性化プロジェクトには、生産現場はじめ営業、総務など各セクションから15人の若手社員が集結し、寿長生の郷を和菓子づくりにどう生かすかを中心に、改めてその“あり方”を議論している。その中には、年間6万人にのぼる郷への来場者をさらに増やし、いかに楽しんでもらうかというソフト開発も含まれている。

 びわ湖ホールとのスポンサー契約は、同ホールがオフィシャルスポンサーを募集したのに応じ、7月に第1号公式スポンサーに名乗りを上げた。今後は、この文化施設との連携を、菓子づくりや寿長生の郷の活性化に反映させる方法を考える。

 草津店開設は、来年7月にJR琵琶湖線草津駅前に商業施設が完成するのに合わせて、テナントとして新店舗をオープンする。現在、営業企画の若手社員3人によるチームが、店舗内容を検討している。新たな商品の発売はもとより店舗運営そのものにも、現在の全国70店を数える既存店舗にはない新味を持った“面白い店”づくりを目指しているという。

 ◆若手の意見を反映

 いずれの取り組みも現時点ではまだ結論には至っていないが、芝田社長は「必ず成果を生み出してくれると信じている」とそれぞれのチャレンジに揺るぎない信頼を示す。

 背景には社長就任以来若手社員の意見を経営に反映した成果がある。商品開発面で、それぞれの季節を彩る和菓子やどらやき、バレンタインチョコレートシリーズといった新たなアイテムを相次いで開発。これらの新たな商品群が、前年比10%増という業績の伸びに着実に貢献している実績があるからにほかならない。(立山篤)

                   ◇

【会社概要】叶匠壽庵

 ▽本社=大津市大石龍門4-2-1

  ((電)077・546・3477)

 ▽創業=1958年9月

 ▽設立=68年5月

 ▽資本金=7980万円

 ▽従業員=700人(契約社員・パート含む)

 ▽事業内容=和菓子の製造・販売および茶室運営、一般飲食事業など

                 □ ■ □

 ≪インタビュー≫

 □芝田冬樹社長

 ■びわ湖ホールとスポンサー契約

 --滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールの公式スポンサー第1号になった

 「ホールが開館15周年を迎えたのを機会に2013年度からオフィシャルスポンサー制度を導入した。その際に声がかかり、滋賀県で育ててもらった企業として恩返しの機会にもなると思い、第1号として名乗りを上げた」

 --スポンサードで期待することは

 「創業者は茶道を学び、和菓子にお茶の文化を取り入れた。2代目の先代は、自然の中に身を置いた農工一体のモノづくりを和菓子づくりで実現しようと『寿長生の郷』を築いた。3代目の自分は、音楽文化発信の拠点であるびわ湖ホールから学ぶ文化を和菓子づくりに生かし、その和菓子文化を『寿長生の郷』で育て、発信したいと考えている」

 --企業イメージの向上にもつながる

 「社長に就任して、当社を知ってもらうための情報発信活動の重要性を認識した。そのため当社では初めての広報担当を置き、社内向けや社外向けの広報誌の作成・発行などさまざまな広報活動に取り組んでいる。今回のスポンサードは、その一環として、これまでとは違った新たな顧客層の方々にも当社を知ってもらうチャンスになると期待している。また、従業員の教育・福祉対策、モチベーション向上にもつながっており、結果として企業イメージを高める機会を得たと喜んでいる」

 --今後どんな活動を

 「まず社員たちとびわ湖ホールが発信する音楽文化を学び、これを和菓子づくりに生かしたい。将来的には、いま若い社員たちが考えてくれている『寿長生の郷』活性化の一環として、郷にあるイベントホールなどを活用し、ホールとのコラボレーション企画により、声楽アンサンブルをはじめとする舞台芸術を発信できればと考えている」

                   ◇

【プロフィル】芝田冬樹

 しばた・ふゆき 1984年、叶匠壽庵に入社。2002年企画室長、商品企画室長兼生産副本部長、執行役員・生産本部長兼商品本部長を経て、09年副社長就任。12年5月から現職。49歳。滋賀県出身。

                 □ ■ □

 ≪イチ押し!≫

 ■銘菓「あも」 40年余のロングセラー

 会社設立後間もない1971年に、大津市の長等総本店で産声をあげた「あも」は、発売以来40年余に及ぶロングセラー商品で、叶匠壽庵を代表する銘菓である。

 小豆と餅のシンプルな素材の組み合わせの棹(さお)菓子だが、その中にはこだわりがいっぱい詰まっているという。

 小豆は、手炊きにこだわり、粒をつぶさないようにしながら丹精込めて1日に何度も炊く。餅は「求肥(ぎゅうひ)」。赤ちゃんの肌のようにつるつるときめ細かい。餅に焼き塩の風味を効かせた塩味のものもあり、生産現場の責任者を務めた芝田冬樹社長は「いずれも職人たちが日々匠の技を磨きながら変わらぬ味を引き継いでいる」と胸を張る。

 1本は重さ350グラム。自宅用は1155円、贈答用などに包装、掛け紙などをほどこした商品は1260円。

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