SankeiBiz for mobile

【本気の仕事講座】(11)ナチュラルな発想をカタチに

ニュースカテゴリ:企業のメーカー

【本気の仕事講座】(11)ナチュラルな発想をカタチに

更新

インテリア・空間デザイナーの尾方釿一さん(SadaoHotta撮影)  宮城県仙台市にすてきなインテリア・空間デザイナーがいる。「OGATA Inc」代表取締役の尾方釿一氏。オリジナル家具作りから始まり、空間デザイン、施工、製作までも請け負う。独自の世界観と作風は、国内はもとより海外でも高い評価を得ている。

 尾方ワールドの原点は家庭環境にあった。小学1年の時にプレゼントされた大工道具。美術にも関心があり、絵を描き、工作に夢中になっていた少年時代。母親はそのような息子の集中力を妨げないように努めてきたという。

 一方で、モトクロスにも夢中になった。渡米体験はその後のキャリアビジョンを固めたようだ。絶対に勝てると思ったモトクロスの試合に負けて挫折を味わい、恐怖体験と生命の危機にも直面した。野性的に生き延びるサバイバル魂を学んだ。

 帰国後、設計事務所に勤務。フルオーダーの住宅建築から床、扉、テーブルなどの家具類のオーダーメードまで扱う中で、さまざまな機会に恵まれた。約2年勤務した後に退社し、独学でグラフィックソフトを学ぶ。ロゴマークやTシャツのデザインを始め、口コミで広がり、1998年、弟の寿氏と会社を立ち上げた。

 代表作の一つが「Beans Chair」。ビーンズ(豆)に「原点回帰と成長し続けるプロセスの大切さ」を託し、現在もすべてハンドメードで作り上げている。新しい発想をし続けるためには、常に見ている環境もドキドキできるものでないといけない! という考えで、アトリエを街から森へ移した。自分たちより年上の樹を伐採して、少しだけ生態系を崩して、森の中に入れてもらい、自然界から多くのことを学び吸収している。

 森という環境下では洞察力が欠かせないという。毎日目にする風景に、ささやかな変化と季節の息吹を感じ取る嗅覚は芸術脳を刺激して余りあるものだろう。

 フランスの哲学者、ベルグソンの「創造的進化」に次の言葉がある。「意識する存在にとって生存するということは、変化することであり、変化するということは、経験を積むことであり、経験を積むということは、無限に己自身を創造していくことである」。尾方氏はベルグソンの言葉を体現しているようだ。3分間ひらめかなければ、その構想は考えない! というくらいに直感の蓄積を大切にしている。「最先端と感性の融合」という理念は尾方氏の背骨となっているようだ。

 現在の構想は“自給自足の家”。本来は行政の専権事項だが、「それを待ってはいられない」として、個人、民間レベルで具現化していこうとしている。尾方氏の思想に共鳴し共に創る職人と、期待を寄せる人との比類なき世界に目が離せない。

                   ◇

【プロフィル】柴田明彦

 しばた・あきひこ 1959年、東京生まれ。慶大法卒。83年に電通入社、新聞局出版・コンテンツ開発部長などを歴任。2006年に退社し、(株)A&Y TRUST 0915 社団法人NS人財創造機構を設立。企業・団体の広報・宣伝、販売に関するコンサルティングなどを行う。

ランキング