SankeiBiz for mobile

【本気の仕事講座】(20)和菓子を通じ人と人をつなぐ

ニュースカテゴリ:企業のメーカー

【本気の仕事講座】(20)和菓子を通じ人と人をつなぐ

更新

和菓子を媒介に人と人をつなぐ那谷忠之さん  石川県小松市に創業(嘉永5年、1852年)し、162年の伝統を誇る和菓子屋「松葉屋」。栗むし羊羹(ようかん)は知る人ぞ知る銘菓だ。今回は松葉屋の常務取締役であり、全国菓子工業組合連合会青年部副部長ならびに中部ブロック長を務める那谷忠之氏を紹介したい。

 老舗の息子として生まれ、大学卒業と同時に家業を継いでいくことは淡々とした流れだった。転機は2011年に訪れた。東日本大震災と、350年の歴史ある地元祭り「お旅祭り」の五人衆になったこと。被災地には既に20回訪れた。「和菓子作り教室」などさまざまなボランティア活動を展開する中で、和菓子には「人を喜ばせ、人と人をつなげるチカラ」があると強く感じた。以来、和菓子屋という属性が好きになり、誇りを持っている。

 和菓子の魅力は2つある。1つは芸術性。季節感、材料などを含め五感で楽しむもの。2つ目は地域の文化や歴史と密接であること。冠婚葬祭や、域外に出かけるときの手土産としての活用など、地域の方々と共生しているものだ。

 「チームこのへん」という地元ボランティア団体の代表を務めているのもうなずける。「まかない種は生えない」「桜梅桃李」「段取り8分、仕事2分」を信条に、「アクティブ、ポジティブ、そしてデブ」(笑)をキャッチフレーズに動きまくる。

 地元では「お旅祭り」の五人衆を務めて一人前といわれてきた。少子化、過疎化の影響を受けながらも、祭り運営を無事に執り行った経験は人間力を鍛え直す契機となった。「自分自身で何もかも行うのではなく、さまざまな分野の優れた人の力を借りる。そのためにも、各分野で能力のある方々が自分の頼みを聞いてもらえるような人物になりたい。そして人と人をつなぐハブのような存在になりたい」と語る。

 すでに8組の縁結びの実績があると聞き驚く。昨年開催された「ひろしま菓子博2013」で、松江市にある老舗和菓子屋「彩雲堂」の山口周平氏と出会う。古くから京都、松江、金沢は“三大菓子処”といわれてきた。本年2月に開催された島根県菓子工業組合青年部会の新年会に講師として招かれた際に三都物語を提案。さまざまなご縁から京都の方々ともつながり、今年7月に開催された第7回全国菓子工業組合連合会青年部中部ブロック石川大会で、三都の若き経営者が本気度を充満させて談義し結束したことは意義深い。160年を超える長い伝統と文化が染み込んだのれんを受け継ぐことは重責だ。

 しかし、何年経ってもさらに輪をかけて大きくひと皮むける“年輪の輪”を想起する。彼の本気度には一切の邪気がなく、しかも利他的だ。人はなぜか利他的な人間の本気度に感染する。

                   ◇

【プロフィル】柴田明彦

 しばた・あきひこ 1959年、東京生まれ。慶大法卒。83年に電通入社、新聞局出版・コンテンツ開発部長などを歴任。2006年に退社し、(株)A&Y TRUST 0915 社団法人NS人財創造機構を設立。企業・団体の広報・宣伝、販売に関するコンサルティングなどを行う。

ランキング