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販売目標5倍以上に引き上げ 柔軟思考から誕生したシャープ「お茶プレッソ」

ニュースカテゴリ:企業の電機

販売目標5倍以上に引き上げ 柔軟思考から誕生したシャープ「お茶プレッソ」

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シャープのお茶メーカー「ヘルシオお茶プレッソ」。今月10日には本体カラーが赤色の新モデルも発売した■■キャプション■■シャープのお茶メーカー「ヘルシオお茶プレッソ」。本体カラーが赤色の新モデルも発売した  シャープのお茶メーカー「ヘルシオ お茶プレッソ」は、茶葉を粉末状に砕き、栄養豊富なお茶を家庭で手軽に楽しめる家電製品だ。「茶葉をひく」「湯を沸かす」「お茶をたてる」の3つの工程を1台でこなす便利さが注目され、4月の発売時から人気が殺到。9月末までの販売目標を当初予定の5倍以上の11万台に引き上げた。

 お茶プレッソの製品化は最初から予定されたものではなかった。臨機応変に開発のターゲットを変える担当者らの柔軟な思考によって生まれた。

 開発責任者だった調理システム事業部新規事業推進プロジェクトチームの田村友樹チーフは「元々はコーヒーメーカーを考えていた」と明かす。

 「ヘルシオ」はシャープの「健康調理」を旗印にした家電ブランドだ。過熱水蒸気で脱油、減塩しながらも栄養分を残すオーブンレンジを平成16年に発売し、ジューサー、炊飯器をヘルシオブランドで展開する。

 これに続くシリーズ製品として24年1月にコーヒーメーカーの開発に着手。開発チームは、コーヒーに含まれるポリフェノールが健康にもプラス効果があることから、より多く摂取できる製品づくりを目指した。だが、1年近くたってもヘルシオと銘打って製品化するだけの特徴を打ち出せずにいた。

 「コーヒーが難しいならお茶にしてみたら」

 開発拠点の八尾事業所(大阪府八尾市)で、苦戦する田村氏らを見ていた別の製品の開発担当者がこう話しかけてきた。思いつきの一言だったが、田村氏はこの言葉に飛びついた。

 調べると、お茶にはカテキンやビタミンA、C、Eといった抗酸化作用を持つ栄養分、食物繊維による血糖の上昇抑制など多くの効果があった。さらに、急須で入れるお茶の場合、茶殻として捨ててしまう栄養分が70%に達していることもわかった。

 そこで茶道に習い、茶葉をひいて、お湯を沸かし、お茶をたてる工程が1つになったお茶メーカーの開発を考えた。粉末なら茶葉の栄養を丸ごと摂取できる。健康訴求のヘルシオブランドに見合った存在感を発揮できるというわけだ。

 苦労したのは、茶葉をきめ細かくひく臼の開発だ。 抹茶作りに使う石臼の溝の形状をヒントに、セラミック製の臼を考案した。だが、自動回転に合う大きさや溝の深さといった形状技術は手探り。「臼の回転が速すぎると熱で栄養成分が損なわれるし、ゆっくりすぎても駄目。利用する人を待たせない2分以内に理想の粉末を作り出せるよう溝の形状をどうするか。試行錯誤が続いた」(技術担当の吉留彰宏・新規事業推進プロジェクトチーム係長)。試作を繰り返す地道な努力を重ね、臼が完成し量産化にめどがたったのは発売直前の26年3月のことだった。

 発売後の反響は、生産が追い付かなくなるほど好評。商品企画担当の川村有里・新規事業推進プロジェクトチーム係長は「若い女性や家族向けなど幅広い層に使ってもらいたい」といい、粉末を使ったお菓子作りも提案する。

 今月10日には、緑茶と紅茶で使いわけたいとの消費者の要望に応えて交換用の臼を販売、さらなる支持拡大を狙う。

(佐藤克史)

 ■ヘルシオ お茶プレッソ

 小型の臼で茶葉を直径20ミクロンの粉末にし、本体背面のタンクで沸騰させたお湯をムラなく混ぜてお茶を作る機器。臼は毎分100回転でゆっくり動いて茶葉をすりつぶし、栄養分が壊れるのを防ぐ。お茶プレッソを使うと、抗酸化作用のあるカテキンの含有量は急須の1.9倍となる。本体のカラーは白系、黒系、赤系の3色。店頭想定価格は2万6000円前後。

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