CO2の削減目標維持して原発ゼロには矛盾 日本のエネルギー政策はどうあるべきか
更新【シリーズ エネルギーを考える】
□エネルギーアナリスト・大場紀章さん
シェールもピーク過ぎた
--大場さんは、化石燃料供給、エネルギー安全保障をご専門とするエネルギーアナリストです。具体的にどのような研究をされておられるのか、自己紹介を含めて教えていただけませんか
「小学4年のときに、世の中のほとんどが石油で動いていることに気づき、資源量が減少しているといわれていた中で100年後に石油がどれだけあるんだろうと考えた瞬間、『これは大変なシステムが社会を動かしている』と思いました。そこから化石燃料に変わるエネルギーに興味を持ち、超電導や核融合などエネルギー科学の道に進み、大学院でも超電導技術の理論研究をしていましたが、時間軸が違うと実感。大学院を中退してシンクタンクに入り、化石燃料供給予測の研究を始めました。スウェーデン留学でエネルギー問題は国によって大きく異なるということに気づき、帰国。現在は安全保障や政治、経済にシフトした研究、分析に取り組んでいます。最近では、米トランプ政権が世界のエネルギー情勢や中東問題に与える影響、誤解と期待が入り交じる電気自動車(EV)普及を主な研究テーマにしています」
--化石燃料といえば、日本では東日本大震災以降、原子力発電所の運転のほとんどを停止したため、発電燃料は化石燃料依存度を極端に高めています。今は原油価格が1バレル50ドル程度と一時に比べて安くなっていますが、こうした価格水準は今後も継続するのでしょうか
「今の原油価格は安いといわれますが、15~16年前の20ドルから30ドルに比べれば2倍程度であり、必ずしも安いわけではありません。しかも、原油掘削コストは上がっており、長期トレンドでの高コスト化は免れない状況です。とくに40ドル前後に原油価格が急落した14年以降に石油会社が上流部門の投資を大幅に減額した影響が、4~5年後には効いてきます。そうなりますと、供給側のタマ不足が顕在化します。一方、米国のシェールオイル・ガスも、初期に開発した大規模な油・ガス田はすでにピークを過ぎており、10年後の20年代半ばには、価格が上がればシェール増産という時代ではなくなります。普通に考えれば、原油・ガスの世界需要は増加基調にあるため、今の50ドル前後という原油価格は持続可能な水準とはいえません」
