高論卓説

日産・ルノー、アライアンスの未来 対等な精神で信頼関係の再構築目指せ

 ゴーンショックから1カ月余りが経過した。日産自動車を私物化した、カルロス・ゴーン容疑者と、日産の乗っ取りを画策したフランス自動車大手ルノーとフランス政府を「悪」とみる論調がメディアにあふれかえっている。しかし、20年近くかけて構築してきたアライアンスを否定してみたところで、ルノー・日産に明るい未来が訪れるわけではないだろう。

 ルノー、日産ともに、両社のアライアンスを継続する方針を表明しているが、アライアンスの未来は、前会長のゴーン容疑者の逮捕によって重大な局面を迎えたといわざるを得ない。

 日産の経営責任が追及されれば、経営の不安定化も懸念される。信頼関係にひびが入れば、アライアンスが機能不全に陥る心配もある。日産の先行きは混沌(こんとん)としており、企業業績への影響も軽視できない。

 RAMA(修正アライアンス基本契約)の第3次改定の要旨に基づけば「日産の取締役会が日産の年次総会に提出する、日産の取締役の任命、解任および報酬の支払いに関する決議に賛成票を投じ、日産の年次総会に日産の取締役会が承認していない決議を提出せず、そのような決議に賛成票を投じないというルノーの役割に関するものである。これらの決議については、ルノーは日産の取締役会の勧告に従って投票する。そうしない場合、日産はルノーの株式を事前の同意を得ずに取得することができる」とされている。

 この2015年のRAMAは、フランス政府がフロランジュ法を制定し、ルノーと日産の統合に向けた圧力を増大させたときに、ゴーン容疑者が主導し、日産の経営の独立性を守る目的でフランス政府と渡り合い、勝ち取った修正だ。

 ルノーは日産の議決権の43%を握っているが、実態として取締役の任命、解任権を行使しづらい条件をのまされている。日産の取締役会の役割は重く、ルノー・日産のアライアンスの未来を左右する力を有しているともいえる。

 フランス政府側がルノーを介して日産の経営の独立性を侵害することがある場合、日産は取締役会の決議をもってルノー株を買い付けられる。出資比率を25%以上に引き上げれば、国内会社法ではルノーは日産への議決権を失う。

 一方、ルノーは日産の取締役会の決議で合意がなければ、日産株を買い増すことができない。ルノー側が日産の支配に勝機を見いだすためには、43%の議決権を用いて取締役会を自身に有利な構造へ変えていかなければならないのである。それは、現在のRAMAの条件からみて決して容易ではない。

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