中小企業

ビール酵母細胞壁を農業肥料として拡販 アサヒバイオサイクル・御影佳孝社長

 ビール醸造工程での副産物「ビール酵母細胞壁」が農業関係者の間で注目を集めている。肥料などに混ぜると病気に強い植物ができ、収穫量の増加につながるとされるためだ。アサヒグループホールディングス(HD)は昨年3月、ビール酵母細胞壁を製造・販売するアサヒバイオサイクルを設立した。「日本の農業革命に一役買いたい」と力を込めるアサヒバイオサイクルの御影佳孝社長に今後の事業戦略などを聞いた。

 ◆食品由来で安全

 --ビール酵母細胞壁の販売に踏み切った経緯は

 「アサヒグループはビール酵母の高い栄養価に着目し、これまで整腸剤『エビオス錠』や調味料の原料となる『酵母エキス』などの商品を販売してきた。ビール酵母細胞壁を卵に例えると殻のようなもので、活用しづらかった。しかし、家畜の飼料に混ぜてみると、動物たちが元気になるなど一定の効果があった。動物に効果があるなら、植物にも効果があるはずだとの考えから、研究が始まった。また、アサヒグループとしてもESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを強化しており、農業資材を活用することで循環型社会構築に貢献できるということから新規事業の立ち上げに至った」

 --ビール酵母細胞壁の効果は

 「食品由来のため安全なうえ、植物の根の成長を促進させる。また、植物の病原菌と似た成分が含まれていることから、植物の免疫力を高める効果もある。ある農家の収穫高が1.4倍に増えたという例があるように、生産性の向上につながっている。効果はそれだけではない。植物は病気に強くなっているため、農薬散布機を使った農薬散布の回数を減らすことができる。これにより二酸化炭素(CO2)排出量の削減にもつながるなど環境面でのメリットも大きい」

 ◆生き残りかけ変革

 --肥料ビジネスを取り巻く環境は

 「国内肥料市場は右肩下がりで推移している。就農人口が減少しているほか、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の影響により安い輸入肥料が増加する可能性があり、今後、事業環境は一段と厳しくなるだろう。こうした環境下で、日本の農業が生き残るには大きな変革が必要だ。幸い日本では肥料や農薬に対する考え方が変わりつつある。植物本来が持つ力を呼び起こすビール酵母細胞壁はこうした新時代の農業に合うはずだ」

 --成長戦略は

 「まずは販路の拡大だ。販売先はこれまで肥料会社1社のみだったが、来年には複数の肥料会社に広げる。また、青果市場や米卸などでも取り扱ってもらう予定で、2021年に売上高5億円の達成を目指す」

 --海外展開は

 「米国に進出する計画だ。ビール酵母細胞壁はゴルフ場からの評価が高く、日本国内にある約2200コースのうち使用実績は約700コース。米国はゴルフ場の数が約1万5000コースあるとされ、潜在需要は大きい」

【プロフィル】御影佳孝

 みかげ・よしたか 慶応大法卒。1988年アサヒビール入社。アグリ事業開発部部長、アサヒグループホールディングスアグリ事業部門ゼネラルマネージャーをなど経て2017年4月から現職。53歳。徳島県出身。

【会社概要】アサヒバイオサイクル

 ▽本社=東京都墨田区吾妻橋1-23-1

 ▽設立=2017年3月

 ▽従業員=4人

 ▽資本金=1000万円

 ▽事業内容=肥料、微生物利用製品、生物化学利用製品の製造・販売

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