金融

金融機関のモラルハザード、信金まで ガバナンス立て直し急務

 業務改善命令を受けた西武信用金庫では、不正が明るみに出たスルガ銀行と同様、投資用不動産向け融資で書類偽装などの問題が起きていた。超低金利下の厳しい経営環境で多くの金融機関が貸し出し先に苦慮する中、コストや人員の削減による不正行為への抑止力低下が懸念される金融業界。ガバナンス(企業統治)の立て直しを急がなければ、さらなる不祥事を生みかねない。(西村利也)

 「地域経済の停滞で資金需要が低迷する中、好業績を続けた西武信金は“信金の雄”ともてはやされた」。ある金融機関の関係者はこう明かす。

 その好業績を生み出したのが、平成22年に理事長に就任した落合寛司氏とされる。従来本店のある東京都中野区が中心だった西武信金の営業エリアを資金需要が旺盛な都心部に転換。東京五輪開催に向けた都心の不動産需要の拡大を追い風に、投資用物件向け融資で貸し出しを急拡大させた。本業のもうけを示す業務純益は23年3月期の76億円から30年3月期には144億円へ、売上高に当たる貸出金も9164億円から1兆6618億円に急増した。

 だが、調査では一部の支店長などによる反社会的勢力の疑いがある人物への融資が判明。「本来貸せない相手に貸して、利益を得るモラルハザードの典型例」(金融庁関係者)だった。

 経営環境の悪化を背景に、金融機関のモラルハザードの事例が近年は後を絶たない。昨年はスルガ銀以外でも、東日本銀行が不当な手数料を顧客から取るなど不正が発覚、金融庁が業務改善命令を出している。

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