シリーズ エネルギーを考える

危機に備え自給率高める必要がある

 □日本エネルギー経済研究所理事長・豊田正和さん

 最近は電気やエネルギーに関する社会的関心が薄れつつある。東日本大震災から8年が過ぎ、曲がりなりにも電力供給が保たれているからだ。国の安全保障や国民生活の安定に直結する日本のエネルギーは本当に大丈夫なのか。各界の識者や専門家に聞く。

 再び安全保障の時代迎える

 -米国とイランの対立が激化し、中東情勢が緊迫化しています。中東依存度が高まっている日本のエネルギー調達への影響も心配されています。中東情勢の行方をどう見ていますか

 「中東情勢はこれまでも不安定でしたが、米国が混乱防止に努めてきたため、まだ安心感がありました。ところが、その米国がシェール革命によって原油輸入国から輸出国になり、エネルギー調達への危機感が薄れたことを背景に、中東に対するスタンスを地域の『秩序維持』からトランプ大統領の関心に沿った『選択的介入』へと変容させた結果、従来のバランスが崩れてしまいました。今の中東は偶発的なことも起こりうる状況にあるともいえ、日本としてはエネルギー安全保障を真剣に考えるべき時代を再度迎えています。今後のインパクトで言うと、最近の原油価格は1バレル=55~70ドル程度で変動していますが、何らかのディストラクション(破壊、破滅)が起きれば、瞬間的に100ドル超えもあると思います。今の日本が調達している原油の中東依存度は約87%と1973年の第1次石油ショック時の約78%を上回っており、日本はかつてのようにエネルギー自給率を高める発想に戻る必要があります」

 -6月に日本のタンカーがペルシャ湾で何者かに攻撃されました。日本の原油調達シーレーン(海上輸送路)の要の1つであるホルムズ海峡封鎖に発展することもあり得るのでしょうか

 「心配なのは、米国の対中東政策の変容によるホルムズ海峡封鎖にとどまらない中東の不安定化です。米国とイランの対立以前から、サウジアラビア対イラン、カタールとサウジなど周辺国との国交断絶など、全体として混迷を深めており、ある日突然、日量1000万バレルくらいの原油供給がポンと無くなることはあり得るという危機感を持つべきだと思います。1000万バレルとは、OPEC(石油輸出国機構)最大の産油国であるサウジの生産量に匹敵し、世界の石油需要(日量約9500万バレル)の1割に相当する規模です。それが無くなると世界全体のGDPは約9%落ち込み、最も影響を受ける中東諸国の次に日本がマイナス7~8%のインパクトを被りうると試算しています。当研究所が昨年調査・分析した結果ですが、その時は現実にはならないと思っていたものの、今では非現実的な問題ではなくなっています」

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