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首都圏交通網 台風15号で大混乱 多言語の災害情報など急務

 台風15号が首都圏を直撃した9日、交通網は鉄道を中心に大混乱した。駅で何時間も待たされた通勤客らに交じり、日本語の構内アナウンスが理解できず、途方に暮れる外国人観光客らの姿も見られた。来夏の東京五輪・パラリンピック開催中に災害に見舞われる可能性もある。外国人が情報の蚊帳の外に置かれないよう対策を進めることが急がれる。

 足止めされた多くの乗客でごった返したJR東京駅。夫と2人で初めて日本を訪れたというニュージーランド人の女性(79)は「ストレスがたまる。訪日はこれで最後にしようと思ってしまうほどだ」とうんざりした表情を浮かべた。

 英語で会話できる人を見つけられず「何が起こっているか全然分からない。ラグビーワールドカップや五輪で海外から多くの人が訪れるのだから、多くの人が英語をしゃべれるようになってほしい」と訴えた。

 昨年の訪日外国人旅行者は3119万人に達した。政府が掲げる来年の目標は4000万人だ。一方、昨年は関西空港が冠水した台風21号被害や、国内初の全域停電(ブラックアウト)が起きた北海道地震などの災害が続き、訪日客が情報不足で不安を感じる問題も浮かび上がってきた。

 では、どう伝達すればいいのか。国土交通省は今年7月、事前に告知する「計画運休」に関する指針で、可能性がある場合は早めに周知し、ツイッターをはじめ会員制交流サイト(SNS)を活用し、多言語で発信する必要があるとした。

 ただ今回、計画運休を決めたJR東日本は、ホームページや駅に設置するディスプレーでは多言語で伝達したが、SNSは準備中のため間に合わなかった。駅では、ホームページに誘導するQRコードを印刷した紙を目立つ場所に掲示したが、多言語でのアナウンスはあまり聞かれなかった。

 鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは、ダイヤの乱れがない平常時については「鉄道各社は以前よりも訪日客への案内を改善している」と評価。一方、混乱時の案内こそ重要だとし「携帯型の通訳機を使うなど工夫し、多言語で伝えることが求められる」と指摘した。

 五輪・パラリンピック期間中は多くの訪日客が見込まれる。東京都が災害が起きた場合に備え募集しているのは、語学能力を生かして外国人の支援に当たる「東京都防災(語学)ボランティア」だ。都や市区町村の依頼で避難所などでの通訳に当たり、災害情報の多言語提供にも協力してもらう。都によると、現在は777人が17言語で登録しているという。

 都の担当者は「海外の方が災害時も困ることがないよう、民間事業者にも協力してもらいながら万全の取り組みを進めていきたい」と話した。

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