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アップルの“告げ口”でサムスンに危機? 貿易戦争を揺るがす一声

 筆者は先日、米国を訪れ、米政府関係者やメディア関係者などに取材を行った。

 ある経済専門のジャーナリストとの話では、8月にドナルド・トランプ大統領と夕食を共にした米電子機器大手Apple(アップル)のティム・クックCEOについての話題になった。

 というのも、最近クックCEOが、韓国の電子機器大手サムスン電子に関して、トランプに泣きついていると報じられたからだ。なぜなら、2018年3月から本格化した米中貿易戦争で、米政府は12月15日からスマートフォンなどを対象に15%の追加関税を発動する予定だが、アップルは中国でiPhoneやノートPCを組み立てており、もろに関税の影響を受ける。一方、韓国やベトナムで製品を作っているライバルのサムスンにはアップルのような関税がかからない。

 つまり、アップルは関税の対象にならないサムスンについて「ずるい!」と駄々をこねており、お山の大将であるトランプに告げ口をしているのである。

 トランプはクックとの夕食会での話し合いを受けて、「ティム(・クック)とは関税について話をした。サムスンはアップルにとってナンバーワンの競合だが、韓国が拠点だから関税を払っていないという、もっともな話をした」と話し、「主に韓国という別の場所が拠点であるからということで関税を払わない、と。私は説得力のある話だと思ったし、これについては考えなければいけない」とコメントした。

 つまり、こうしたアップル側の「主張」にトランプは理解を示しているのである。

 サムスン側は息を飲んだかもしれない。予測不能で、普通では考えられないような動きを平気でするトランプだけに、サムスンの関係者は戦々恐々としているはずだ。しかも、トランプに対するクックの発言力が高まっていることは、最近特に知られるようになってきている。アップルの「告げ口」で、サムスンは今後どうなってしまうか、考察してみたい。

 関係が変化? アップルとトランプ

 そもそも、クックとトランプは特に良好な関係ではなかった。というのも、クックは16年の米大統領選の段階では、トランプの対抗馬だった民主党のヒラリー・クリントン候補を支持。反対にトランプも、選挙戦ではアップルを名指しで批判し、「不買せよ!」とまで発言していた。

 トランプが就任した後も、クックはトランプが決して歓迎しないような発言をしている。17年1月にトランプが、特定7カ国の国民に対して米国への入国禁止を発表すると、クックは「私たちはこの措置を支持しない」と社内に説明したことが大々的に漏れ伝わった。

 また17年6月にトランプがパリ協定(地球温暖化対策の国際的枠組みを定めた協定)から離脱した際も、「離脱は地球のことを考えると過ちである」とTwitterでコメント。その直後にトランプが大統領令で「米国テクノロジー評議会」を立ち上げて米IT企業のリーダーたちをホワイトハウスに招いているが、出席したクックは暗い表情でトランプの隣に座っていたことが当時ニュースをにぎわせた。

 ちなみにこの集まりにはジェフ・ベゾス(Amazon)、エリック・シュミット(Alphabet)、トム・レイトン(Akamai)、ブライアン・クルザニッチ(Intel)、サティア・ナデラ(Microsoft)といった、当時のそうそうたる顔触れが一堂に会していた。

 さらにいうと、17年、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義団体のデモ活動で死者が出る騒ぎになると、トランプが白人至上主義者を擁護するような発言をした。このときクックは「大統領に合意することはできない」とコメントしている。

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