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防災救命ヘリ、持ち運べる簡易照明で夜間の活動拡大 発着の誘導をサポート

 災害発生後、ヘリコプターで夜間に患者や物資の搬送を行う場合、発着場所に照明設備が必要だ。このたび持ち運び可能な夜間照明が開発された。これにより、災害時のヘリ活動の時間、場所が飛躍的に広がることが期待される。(北村理)

 現在発生が懸念されている南海トラフ地震。発生後に、地震による土砂災害や津波による浸水で孤立する山間部や沿岸部の集落は、東海、近畿、九州で5千にのぼると推計されている。

 孤立集落への物資救援やけが人などを医療機関へ搬送する手段としてはヘリによる活動が欠かせないが、夜間に活動が必要な場合、ヘリ発着地点には照明施設が必要だ。しかしヘリポートの常設型照明は設置費用が約1千万円かかるなど、どこにでも設置できるものではなかった。

 こうした課題を解決するため学校法人「ヒラタ学園」航空事業本部(神戸市)と岐阜大工学部(岐阜市)の研究チームが、持ち運び可能で費用を約130万円に抑えた「簡易夜間照明」を開発。来年春からヒラタ学園が販売する。

 簡易夜間照明はLEDで六角形。高さは土台と合わせ約5センチ。この照明を航空法に基づき約20メートル四方で16個程度配置する。電源不要の電池挿入型で、無線により離れた場所やヘリのコックピットから点灯できるため、災害時に必要な場所に運べば、ヘリの発着が可能になる。

 岐阜大工学部の松下光次郎准教授は「照明の光がどこからでも見え、着陸時のヘリの風圧に飛ばされない形と高さと重さの条件を備えながら、1人で持ち運びできる総重量などを検討し、開発した」と話す。

 実用化に際し、夜間の空港や昼間の河川敷で点灯、着陸実験が行われた。

 ヒラタ学園の担当者は「風圧の影響もなく、従来の夜間照明と同等の効果を確認できた。従来の夜間照明機器は重さが1つ3キロ以上あるが、今回は風圧の影響を受けにくくするように高さを抑えたため、重さを1キロ程度に軽量化できた」という。

 同社と災害時の物資搬送の契約を結んでおり、実験に協力した給食サービス会社「日清医療食品」(東京都)の神戸修広報課主任は「災害弱者になりうる医療、福祉、介護施設に配食しているため、災害時はいち早く食料を届ける体制を構築している。夜間にヘリの活動ができるようになると、迅速性が増し、被災者の健康により配慮が行き届くようになる」と期待を寄せる。

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