知財は競争力向上へのツール
□特許庁から人材派遣 中内・今治市産業部次長
愛媛県今治市役所は1日、特許庁の中内大介氏(38)を産業部次長兼商工振興課長として迎えた。米ワシントン大学ロースクールでLL.M.(法学修士)を取得した同庁が期待する人材の一人だ。中内氏に抱負を聞いた。
--特許庁から地方自治体への派遣(出向)は珍しい
「昨今、政府の職員や大企業の社員が地方へ派遣されるようになり、人材交流の土壌は形成されつつあるが、特許庁では東日本大震災時に実施した被災自治体への業務支援を除き、初の自治体派遣となる。任期は未定だが、一般的には2、3年が多い」
--派遣のきっかけは
「実は今治市で生まれた。以前から、地元で働き、貢献してみたい気持ちがあった。昨年7月、母校である今治北高の創立120周年記念式典で後輩へ向けて記念講演をさせてもらった際、菅良二市長が列席されており、式典後の懇親会で地元貢献の気持ちを伝えた。そこから互いの組織的調整が少しずつ進んだ」
--市の知的財産の状況は
「今治市には基幹産業に造船業があり、海事関連の技術も特許も数多い。技術力を重要な差別化のポイントにしている企業も多く、知財意識は高い。今治タオルは世界的ブランドになりつつあり、今治タオル工業組合は昨年度の知財功労賞(経済産業大臣表彰)に選ばれた。他にも、しまなみ海道の多島美の絶景、FC今治の情熱など、たくさんの魅力ある知財が存在している」
--どのような活動をするのか
「求められていることは、産業政策全体を見るゼネラリストとしての役割だと考えている。特許庁の調査室ではシンクタンクのような仕事をした。経産省商務情報政策局にいた経験もある。多くの方から話を聞き、市の産業の状況や課題を把握、理解することは一番大事で、最初にすべきことだと思っている」
--知財活動については
「知財ばかりを前面に押し出す考えはない。知財は産業や企業の競争力を高める中で大事なツールの一つであると認識している。もちろん、知財に関する知識や経験を持った人材として、地域でいろいろな価値を生み出していけることを示してはいきたい。今治の知財の魅力を地域の皆さんと一緒になって磨き、発信していくつもりだ」(知財情報&戦略システム 中岡浩)