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新型コロナで大阪府知事「店名公表なら補償」 公平性の確保にハードル

 大阪府の吉村洋文知事が、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)拡大防止に協力した事業者への独自支援策を今月中に取りまとめる方針を表明した。府の要請に応じてクラスターが出た店名を公表するなどし、経営損失が生じたケースを想定。ただ制度化には公平性の確保など複数のハードルが存在する。吉村知事の支援表明を歓迎する店は多いが、“大人の事情”で公表をためらう業界もある。

 「簡単ではないが、どうしても制度化を目指したい」。吉村知事は3日、記者団にこう述べ、改めて事業者支援に強い意欲を示した。

 吉村知事が支援を表明したのは、1日の記者会見。クラスターが発生した大阪市内のライブハウスを念頭に「社会防衛のために自ら犠牲になったところへインセンティブ(動機付け)制度を作れないかと考えている」と語った。

 2月中旬から下旬にイベントを開き、クラスターが発生した大阪市内のライブハウス4店は、府の要請を受けて店名の公表などに応じた。府の検査呼びかけにより、16都道府県で客やその濃厚接触者ら計105人の感染が確認された。

 多数の陽性確認は感染経路が追跡できた裏返しともいえ、「大阪がこういう(爆発的急増に至らない)状況で済んでいるのは、ライブハウスの協力によるところが非常に大きかった」と吉村知事は振り返る。

 4店のうち大阪市北区の「Rumio」を経営する金中謙太さん(30)は「公表しなければ、利用者やその家族を感染リスクにさらすことになる。感染拡大を阻止するために公表を決めた」と語った。

 ただ、一方では営業自粛に追い込まれた上、公表後は「なぜこの時期にイベントをしたのか」「悪いと思っていないのか」と責められもしたという。金中さんは「支援はありがたいが、経済的事情で長期間休業できない店は公表をためらうのではないか」と話す。

 府内ではライブハウスに続き、大阪市北区のクラブやショーパブといった接客を伴う夜間営業の飲食店でクラスターが発生したとされる。府は同意なしの店名公表は「落ち度のない人に不利益を与える可能性がある」と慎重な立場で、現時点では店側から同意が得られていないため、店名公表には至っていない。

 大阪・北新地でバーを営む男性(63)は「感染経路を追う意味では公表に賛成だが、北新地は企業幹部やお忍びのお客さまが多く、プライバシーを守ることが絶対だ。要請に応じるのは難しいのではないか」と話す。吉村知事はこうした事情も踏まえた上でインセンティブ制度を作り、協力を引き出したい考えだ。

 制度構築には、複数の課題が想定される。法律に基づき自治体が事業者の損失を補償するには、公金を投じる「公益上の必要性」がなければならない。府によると、ライブハウスのケースでは、店名の公表や営業自粛が感染拡大防止につながったという関連性を明らかにする必要がある。休業中に払う店の賃料や収益の損失分など、補償範囲の基準作りも簡単ではない。

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