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外食産業、休業と人手不足の狭間で雇用確保に苦慮 新常態への対応も課題

 新型コロナウイルスの影響で営業自粛を余儀なくされていた外食が従業員の雇用確保に苦慮している。売り上げが減少する中、給与支払いが固定費として経営を圧迫する一方、コロナ前の深刻な人手不足を念頭に雇用維持も欠かせないためだ。他業種と人材を融通する仕組みの構築など、“長期戦”を視野に入れた動きも活発化してきた。

 「人生の勉強ともいえる経験になった」。食品スーパー「ロピア」の青果売り場に立つ渡辺和也さん(24)は外食大手ワタミの運営する居酒屋「ミライザカ」石神井公園店の店長だ。同店は緊急事態宣言などを受けて4月12日から休業。渡辺さんはワタミからの出向を提案され、新天地で奮闘する。

 出向はワタミとロピアの契約に基づく制度。首都圏1都3県に49店舗を展開するロピアは、在宅勤務の拡大や学校休校などを受け来店客数が増加。人手不足も懸念される中、休業店舗の従業員を多く抱えたワタミと利害が一致した。アルバイト代はワタミが受け取り、渡辺さんはワタミから給与が支払われる。

 緊急事態宣言の解除で、渡辺さんは6月から居酒屋業務に戻り、営業再開の準備に取りかかる。ワタミは今後も営業状況に応じて社員の出向を続ける方針だ。

 居酒屋「塚田農場」を運営するエー・ピーカンパニーも4月から従業員にスーパーや宅配ピザチェーンなどの仕事を紹介する。自社店舗の休業が長期化して従業員の給与減額を余儀なくされる中、減額分を補ってもらおうと紹介を始めた。

 人材確保に腐心する背景には、外食業界を取り巻く慢性的な人手不足がある。

 厚生労働省によると、外食で働く調理や給仕などの有効求人倍率は約3~4倍で推移していた。新型コロナの感染拡大が本格化する前の1月の帝国データバンクの調査では、飲食店の約77%が「アルバイトなどが不足している」と回答、全業種中で最も高かった。

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