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地元食材で変わり種ビール開発 滋賀の「近江麦酒」

 ふなずしや琵琶湖産シジミ使用

 面白おいしいビールを目指したい-。滋賀県産の食材を原料にした商品作りに、大津市の小さな醸造所「近江麦酒」が取り組んでいる。代表の山下友大さん(46)は「クラフトビールを手に取る入り口になるような変わり種を」と、地道に開発を続けている。

 カフェバーを併設した醸造所の広さは、約30平方メートル。ビールを発酵させる際によく使われるタンクを置く場所はない。代用するのは、大きなポリ袋。「一度に仕込めるのは約100リットル。他の小規模業者よりも圧倒的に少ない。でも、小回りが利きます」と、山下さんは意に介さない。

 2018年に醸造を始め、その年の秋に滋賀県野洲市で開かれたイベントで、県の郷土料理「ふなずし」を原料に加えた「鮒BEE(ふなびー)」を出品した。ビールの味わいを邪魔しない程度に、かすかに漂う独特の発酵臭。住民から好評だった。

 これまでに県産の果物や琵琶湖の固有種セタシジミを使った地ビールを、約30種類造った。今年4月に発売した新作は、同県守山市で古くから栽培される品種のカブを原料の一部にした商品だ。

 システム開発会社を1人で営んでいた5年ほど前、妻が買ってきたクラフトビールを初めて飲んだ。「コクや香りが全然違う」。衝撃を受け、いつかビールの店を開きたいと強く思った。

 ビールと名乗れる要件が緩和される酒税法改正が、18年4月にあることを知った。「今が好機。法改正前に酒類の製造免許を取得したほうがよい」と判断。会社を知人に任せ、島根県江津市の「石見麦酒」で1カ月ほどビール造りの基本を学び、17年に起業した。

 製造量を追い求めることができない代わりに、原料にできる食材探しにこだわり、世の中にないビールを生み出そうと考えている。今後は、自前のホームページでの販売にも力を入れる。「強い個性の食材が前面に出ないよう、醸造では注意している。『なんや、普通に飲めるやん』と、良い意味でがっかりさせられたら大成功」

【用語解説】クラフトビール

 地ビールとも呼ばれ、それぞれの土地で小規模の醸造所が原料や製法を工夫した、生産量が比較的少ないビールを指すとされる。1994年の酒税法改正による規制緩和で、年間最低製造量が大幅に引き下げられたため、大手メーカー以外の事業者が参入しやすくなった。以降、個性豊かな商品が全国各地でお目見えしている。

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