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ドコモ子会社化 携帯と固定回線を融合 基盤整備急ぎ国際競争力強化へ

 NTTがNTTドコモを完全子会社化するのは、第5世代(5G)移動通信システムの運用が始まり、あらゆるモノが通信でつながるデジタル社会を迎えるにあたり、これまでのように固定通信とモバイル通信を分けて考えるのではなく、融合したサービスとして取り組む必要性が生じていることが背景にある。GAFAなど巨大IT企業が覇権争いを行う激動のデジタル分野で日本企業は後れをとっており、基盤整備を急ぐことで国際競争力の強化を目指す。

 「ダイナミックな経営環境に対応する必要がある。融合により新たなゲームチェンジを起こしたい」。NTTの澤田純社長は、29日に開いた記者会見で、ドコモを完全子会社化する思いをそう語った。

 背景にあるのは社会環境の大きな変化だ。5Gでは工場や農場など、屋内外を問わず、無線の携帯回線でも光回線と同等の高速通信が可能になる。自動運転や街全体をITでつなぐ次世代都市「スマートシティー」などの実現も期待されており、こうしたデジタル社会では、モバイル通信と固定通信の垣根はなくなっていく。

 完全子会社化により、両通信を組み合わせて効率的にサービスを提供していくことを可能にし、意思決定もしやすい環境を整備したい考えだ。

 GAFAなど巨大IT企業が台頭する中、国際競争に後れをとっているという危機感もある。デジタル社会では幅広い企業がデジタル技術を取り入れて新事業を生み出す「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組むことになる。そのパートナーとなるのが通信事業者だ。NTTも今年3月にトヨタ自動車と「スマートシティー」の基盤を共同開発することで合意するなど、多くの企業との連携を進めている。

 その意味では通信分野で国際競争力を付けることは日本経済の成長そのものに大きく影響を及ぼすことになる。澤田社長は「世界で利用される情報通信機器、ソフト、サービスを生み出し、わが国の国際競争力向上に貢献したい」と強調する。

 ドコモにとっても米国やインドへの進出失敗により、見通せなくなっていた海外展開について、仕切り直すことも可能となりそうだ。5Gでは出遅れが指摘される日本だが、第6世代(6G)や次世代の固定通信サービスで巻き返しをねらう。(高木克聡)

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