高論卓説

東証システム障害対策で提案 銘柄絞り手サイン売買の立会場復活

 東京証券取引所で10月にシステム障害が生じ、全上場銘柄の売買が終日止まった。東証のシステム障害は以前にも何回か発生した。1997年8月には多くの銘柄の売買が午前中に止まった。2005年11月にも株式売買が午後早い時間まで止まった。同12月には旧ジェイコム株の誤発注をシステム上で取り消すことができず、損失負担をめぐって東証と注文を出した証券会社との間で係争が繰り広げられた。

 06年1月、12年2月、18年10月にも類似のシステム障害が発生したが、今回のように全上場銘柄の売買が終日止まったのは立会場が消えてから初めてだった。

 東証から立会場が消えたのは1999年4月30日。その日、立花証券の福園一成会長(当時、故人)に感想を聞いた。「今日は市場の葬式。システム売買への全面移行で相場からエモーショナル(感情)が消える。無味乾燥で無機質な市場に変質するだろう」。こんな趣旨の話だった。東証のシステム開発は進んだ。今では1000分の1秒単位、10銭刻みでの売買が可能となった。超高速・高頻度の売買が常態化した。目先の値ザヤ稼ぎ狙いの投機筋が跋扈(ばっこ)し、上げ下げの理由も分からないうちに変動する無機質な相場展開が続くようになった。

 「機械あれば機事あり、機事あれば機心あり」。辛口の名コラムニストの山本夏彦翁(故人)が好んだ隻句だ。出典は中国の古典『荘子』。『広辞苑』には機事は物事をたくらむこと、機心は機を見て動く心との意味が載る。多数のサーバーなどで構成する東証のシステムは機械の塊だ。機事と機心は機械が進歩、高度化するほどあらわになる。たくらみが巧みで、機を見るに敏な外国人投資家の日本株売買シェア、持ち株比率が高まったのは東証システムの高度化が支えだったともいえる。

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