価値共創

ベンチャーキャピタル老舗・ジャフコ “黒子”として「リソース提供に全力」

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 未上場のスタートアップ企業に出資し、成長を支援するベンチャーキャピタル(VC)は、資金だけでなく、さまざまなリソースを提供している。産業育成にとって欠かせない存在だが、その全体像はあまり知られていないのが現状だ。新興企業の羅針盤の役割を果たしてきたVCを取り上げる「価値共創」。1回目の今回は、1973年に創業した老舗VCの「ジャフコ」(東京都港区)を取り上げる。

 価値向上のための試行錯誤

――そもそもVCとはどのようなビジネスモデルなのでしょうか

ジャフコ パートナー、北澤知丈氏:

 成長を目指すスタートアップ企業に対し、資金面の提供を行うのがVCです。人材の採用や営業、ネットワーク、管理体制の整備といったリソースも提供します。

 収益モデルで言えば、投資という形で株式を取得することになります。投資したスタートアップ企業が将来、成長すれば成長した分だけ株価が上がることになりますから、IPO(新規株式公開)やM&A(合併・買収)のタイミングでキャピタルゲイン(譲渡益・売買益)を得るというモデルになります。2021年3月期には上場、未上場合わせて113億円のキャピタルゲインを得ました。

 VCにはもう一つ、投資運用業という側面もあり、資産を運用したいお客さまからお金を預かってファンドを運用しています。資金を適切にスタートアップに流し、リスクに見合ったリターンをしっかりとお返しするというのが、わたしたち資金を預かるVCの責任でもあります。

――投資リターンの目標や投資方針はどうなっていますか

北澤氏:

 金融機関や事業会社など、投資家の皆さんからVCファンドに出資していただいて運用しています。運用期間中の解約はできない承認なので、その分、金融商品の中でも、高いパフォーマンスが求められています。ジャフコの投資方針は、厳選した会社に相応の資金を投入し、当事者として企業価値を向上させることに尽きます。これを「厳選集中投資」と呼んでいます。

 ジャフコでは年間20~30社に出資していますが、一般的なVCの平均からすると少ない方ではないかと思います。今、組み入れを行っているファンドは約800億円です。国内の中でも大きい資金を運用しているのですが、出資先の企業数は少ない点が「厳選集中投資」の特長といえます。

――出資先を厳選して集中投資しているということでしょうか

北澤氏:

 ジャフコが投資対象としている会社のステージとしては、シード・アーリー期のスタートアップ企業がメインとなります。グローバルで戦えるスタートアップを育てていく際、厳選した会社に集中して資金を投下することで、しっかり大きい会社を作っていけるようにしているのです。

ジャフコ 執行役員 松本季子氏:

 ジャフコが創業した1973年当時は、日本における未上場企業の資金調達の手段として、新たに直接金融の市場を開いていこうとしていました。

 ポテンシャルは高いのに、リスクが高いと判断され、金融機関から調達する手段がないという企業に資金調達の道筋をつけていく。80年代以降、ファンドを使って投資家からリスクマネーを募るようになり、黎明期は海外機関投資家の資金に支えられてきました。現在の資金の出し手は国内の金融機関、事業会社が中心です。投資先企業が成長し、ファンドのパフォーマンスが向上し、そのリターンをまたファンドに出資してもらう。シンプルな循環構造ですが、社会経済環境が大きく変遷してきたなかで、継続していくのは容易なことではありません。

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