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新宿駅前の「巨大猫」が福を呼ぶ? 通行人に癒しを、広告主には技術を提示

SankeiBiz編集部
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 東京・JR新宿駅東口の大型街頭ビジョン「クロス新宿ビジョン」に“巨大猫”が現れた。湾曲したスクリーンの大きさは高さ約8メートル、幅約19メートル。1日から試験的に運用されており、通常の広告の合間にリアルな三毛猫がくつろぐ3D映像が技術デモとして流れて話題を呼んでいるのだ。企画したのは不動産やデジタルサイネージ(電子看板)を手掛けるユニカで、新型コロナウイルス禍が続く中で明るい話題を提供したかったという。人の流れが減少した影響で屋外広告やデジタルサイネージ業界は苦戦を強いられているが、ユニークなアイデアが各方面に福を招いているようだ。

動画の再生回数は500万回超え

 「まるでバック・トゥ・ザ・フューチャー」「サメのホログラムのように襲ってくるのかと思った」

 短文投稿サイトのTwitter(ツイッター)では、近未来を描いた1980年代のSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」を連想するという声が少なくなかった。2015年の世界を訪れた主人公が、映画館らしき建物から飛び出してきたサメの立体映像に驚くワンシーンと重ねているようだ。

 企画したユニカの広報担当者はこう説明する。

 「スクリーンの曲がっている方向から眺めたときに、猫が立体的に見えるようになっています。新宿駅東口広場から見るのがおすすめです」

 別の角度から眺めたときには効果的に立体感を出せないというネックを抱える仕組みではあるものの、正しい角度から見ると衝撃的な体験になる。そのインパクトの大きさは、5日に公式アカウントがTwitterに投稿した動画が約500万回以上(8日時点)再生されていることからもうかがえる。

海外に比べておとなしい…「三毛猫」にしたワケ

 日本では眼鏡型デバイスなどを使わず、裸眼で立体的な映像を楽しませる取り組みは珍しいが、海外ではすでに広告やデジタルアートの手段として用いられている。

 韓国では昨年、ソウルの複合施設「COEX K-POP Square」の曲がった巨大スクリーンに激しく荒れる波を映し出し、建物の上に水槽があるかのように錯覚させるデジタルアート「WAVE」が公開された。

 英ロンドンの繁華街ピカデリーサーカスにある巨大スクリーン「ピカデリーライツ」では、動画配信大手Netflixが映画「アーミー・オブ・ザ・デッド」の宣伝で、恐ろしい“ゾンビ虎”がリアルに歩き回る様子が3Dで映し出された。中国でもビルの屋外スクリーンからライオンや宇宙船が飛び出す映像が国境を越えて話題を呼び、TikTokなどの動画メディアを賑(にぎ)わせている。

 海外のライオン、荒波、ゾンビ虎と比べると日本の三毛猫はずいぶんおとなしい印象だが、そこにはロケーションを意識した狙いがある。「渋谷には忠犬ハチ公、池袋には『いけふくろう』という動物のキャラクターがいる。新宿はどんな動物がよいかと話し合い、老若男女問わず人気がある猫に決まった」(同担当者)というのだ。

 3D映像は映像制作会社のオムニバス・ジャパンが担当した。かわいらしい猫で通行人を癒やしつつ、「技術的にこういうことが可能ですよ」とサンプルを提示することで広告主を獲得したい考えだという。「すでに広告の問い合わせをいただいています」と担当者。映像のインパクトだけでなく、福を呼ぶ“招き猫”のご利益も確かなようだ。

 反響を呼んだデジタルサイネージだが、立体的に見える位置に人が集まりすぎないよう注意喚起も必要だ。担当者は「密」状態を避けるよう呼びかけ、SNSで猫が現れる時間を告知することで“猫待ち”の人が増えないようにするとしている。

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
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