サービス

「外食産業は急激な変革期」うなぎのファストフード店「宇奈とと」ライセンス販売で好調

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 炭火香るこだわりのうな丼が1杯500円(税抜き)から気軽に食べられる、うなぎ専門のファストフード店「名代 宇奈とと」の売り上げが新型コロナウイルス禍でも好調だ。インバウンド(訪日外国人客)需要が消失した東京・浅草などの店舗を除いた2020年の年間売り上げは対前年比94.3%と、飲食業界全体が落ち込む中で健闘している。背景にあるのは、テイクアウトやデリバリーサービスに的を絞ったうな丼のライセンス販売。苦境に陥る飲食店の経営支援にも貢献しており、サービス開始から1年足らずで国内40店舗以上の契約を獲得した。

 売り上げと店舗支援を両立する「ゴーストキッチン」

 「コロナ禍でクライアントの飲食店が苦境に追い込まれる状況を見て、何かできることはないか」

 宇奈ととを運営する「G-FACTORY」(東京都新宿区)の片平雅之社長は今月15日の記者会見で、うな丼のライセンス販売を始めた理由を明らかにした。全国に14カ所ある宇奈ととの直営店でテイクアウトやデリバリーの売れ行きが伸びていることにヒントを得て、ライセンス契約した店舗との“コラボ販売”を開始したという。

 コロナ禍で需要が拡大した「おうち外食」に速やかにかじを切り、同社のクライアントである飲食店とライセンス契約を交わした。契約先の飲食店のスペースとスタッフを活用。いわゆる「ゴーストキッチン」という出店形態で宇奈ととのうな丼をテイクアウトとデリバリーのみで販売したのだ。

 職人いらずの簡易なオペレーションに加え、指定工場で蒲焼きまで加工する品質管理は、ゴーストキッチン型の出店ともなじみ、売り上げも契約店舗も順調に増加。「ゴースト出店なんてコロナ禍以前は考えられなかった」(片平社長)が、昨年8月から7月15日現在までのライセンス契約数は国内外で43カ所に上る。

 2020年の年間売り上げは、インバウンドの需要が消失したことで対前年比79.5%と落ち込んだものの、「おうち外食」を意識した戦略は奏功し、インバウンド需要が高い浅草や上野などの店舗を除いた売り上げは対前年比94.3%と善戦している。片平社長は「うなぎ自体がもともとテイクアウトやデリバリーに向いていた」と振り返る。

 タイやベトナム、香港の店舗でもニーズが増加しており、コロナ禍で海外旅行ができない地元の人を中心に人気だという。海外の店舗によっては、コロナ禍前を上回る売り上げを記録した。「宇奈ととのライセンス展開で苦境に立たされている飲食店をサポートしながら、当社の本業である飲食店の開業から出店までのトータルサポートを継続する」(片平社長)という。

 今年6月からは蒲焼きや串焼きなどの商品と七輪や炭がセットになった体験型ミールキット(料理キット)のオンライン販売も開始。今月28日の「土用の丑の日」に合わせた限定セットも用意しており、書き入れ時を前に「おうち外食」ニーズへの準備は万端だ。

 片平社長は「外食産業は急激な変革期を迎えている。既存の店舗型だけでなく、ゴーストキッチンやキッチンカー、立ち食いスタイル、オンライン販売など柔軟に対応し、新規出店を加速させたい」と意欲を示している。

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
SankeiBiz編集部員が取材・執筆したコンテンツを提供。通勤途中や自宅で、少しまとまった時間に読めて、少し賢くなれる。そんなコンテンツを目指している。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング