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「官能」の世界、女性にも広がる 人気AV男優、小説でタブーに挑戦

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「官能」の世界、女性にも広がる 人気AV男優、小説でタブーに挑戦

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女性向けに女性スタッフが制作したアダルトビデオは、女性が見て不快感を覚えない作りになっている=(C)SILKLABO「ラブレス。」  男性の専売特許と考えられてきた「官能」の世界が、今、女性の間で急激に広がっている。女性向けに女性スタッフが制作したアダルトビデオ(AV)が売れ行きを伸ばし、人気男優も誕生。女性をターゲットにした官能小説も相次いで創刊され、読者を増やしている。女性が経済力や発言力を増し、「性」に対しても積極的になっていることや、仕事などで強いストレスを抱え、その癒やしとして「官能」を求める女性も増えているようだ。(木村郁子)

 AV男優との握手会に80人の列

 12月17日の午後6時。大阪市北区の新阪急ビル3階「ブックファースト梅田店」の前には、長い行列ができていた。並んでいるのは、10代から50代ぐらいまでの女性ばかり約80人。手には、人気AV男優の一徹さん(35)の写真集「いってちゅ。」(扶桑社)をにぎりしめている。

 一徹さんは女性向けのアダルトビデオを専門に手掛ける「シルクラボ」の専属男優として作品に出演、女性たちに絶大な人気を誇る。この日、本人が来店しサイン会が開催されるとあって、ファンが長蛇の列を作っていた。

 小学生の子供を持つという主婦(35)はママ友と一緒に行列に。もともと「夫が見るようなAVには興味もないし抵抗がありました」。しかし女性雑誌「an an」の「セックス特集」で一徹さんの存在を知り、女性向けAVを購入するようになったという。「日常忘れていたときめきやどきどきを思い出させてくれます」。本人との握手に感激した面持ちだった。

 写真集を発行する扶桑社によると、出版後すぐ、アマゾンの総合書籍ランキングで9位に。予想以上の反響を呼び、増刷を決めている。

 女性の共感呼ぶAV

 一徹さんが専属契約している「シルクラボ」(東京都中野区)。女性による、女性のためのアダルトビデオ制作を目指して平成20年、業界大手企業のグループ会社として設立された。

 そのきっかけは、女性から寄せられる不満の声だった。ここ数年、インターネットなどを通じて簡単にAVを購入できるようになり女性客も増えていたが、「見るに耐えない」「こんな設定はありえない」といった声がしばしば寄せられていた。そこで、「女性がつくる女性のためのアダルトビデオ」を目指しシルクラボを立ち上げたという。

 制作スタッフはほとんどが女性。社長の牧野江里さん(30)もプロデューサーや脚本家として映像作りに携わっている。「男性向けのAVとは一線を引いています。恋愛を描き脚本にリアル感を持たせています」と話す。「従来のAVは男性向けファンタジー。私たちは女性が不快感を覚えるような描写はしません」。男性向けの映像ではみかけない、コンドームをつけるシーンが、どの作品にも取り入れられている。

 現在、デジタルコンテンツを含め月3本の新作を制作。18歳から60代まで、幅広い年齢層に受けいられているという。

 タブー打ち破る女性向け官能小説

 小説の世界でも女性向けの官能小説のレーベルが次々と立ち上がっている。平成21年、フランス書院がティアラ文庫をスタートさせると、以後、23年にはマリーローズ文庫(コスミック出版)、昨年はジュリエット文庫(インフォレスト)、シフォン文庫(集英社)と続く。

 今年9月にはメディアファクトリー(東京都千代田区)が「フルール文庫」を創刊。帯に「おまえのカラダを目利きさせろ」と刺激的な言葉が並ぶ「恋色骨董鑑定譚」(斉河燈・作、藤浪まり・絵)など、これまでに6冊を刊行した。

 等身大の人物を主人公に据え、日常の風景を描いたが、これまでの恋愛小説では省かれてきた「性」の部分を正面から取り上げた。「男性には風俗の世界があり、オープンに性が語られてきたのに対し、女性が性を語ることはタブー視されてきた。でも女性も、ドキドキするような官能の世界を求めているのです」と編集長の波多野公美さん。読んだ後に、ほおを染めるようなときめきを感じてもらい、「仕事に家事に一生懸命生きる女性たちのサプリメントになれば」と思いを込める。

 官能に貪欲な女性が社会を成熟させる

 女性の官能世界の広がりについて、精神科医で立教大学教授の香山リカさんは「昔は性に対して受け身だった女性も、経済力をもち、自分の意見をきちんと主張するようになり、性に積極的な人も増えてきた。草食系男子が増えていることもあり、性への貪欲さは男女で逆転しつつあるかもしれません」と話す。また、「官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか」(幻冬舎新書)などの著書がある宗教人類学者の植島啓司さんは「日本人は、女性が悦楽におぼれることは罪だという考えが根強かった。けれど、女性が強くなり、社会のイニシアチブを握るようになり、性については今や男女同権。女性が悦楽を語り、例えば愛人をもつ、というようになれば、成熟した社会になるんじゃないでしょうか」と話している。

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