郵便局のあるべき姿
筆者は保険商品や投資信託を販売し、日銭を稼がなければ存続が危ぶまれるような収益構造こそが、今回の問題を解決が難しくしていると考えます。郵便局の収益構造は、銀行も同様ですが、今回は郵便局の問題であるため状況説明は割愛します。
もはや、民営化の後戻りができるとは思いません。全国の郵便局を国民の生活インフラとして店舗ネットワークを維持することを目標にするのであれば、郵便費の値上げ、預金や振込業務の機械化、郵便窓口業務の機械化、口座維持手数料などを推進し、健全な形で収益を上げる構造を目指す必要があるでしょう。
理想を言っても、既に上場されており、後戻りできない状況にある日本郵政グループは、今後も保険商品の販売を継続するしか道はありません。
郵便局 「金融機関」としての未来
筆者の家族もかんぽ生命保険に加入しておりました。非常に古い契約でしたので、本来はあり得ないはずの「契約者=自分」「死亡保険金受取人=自分」という契約形態で、郵便局の知識の無さに驚いた経験があります。金融商品は素人が販売するのは危険です。人の財産を破壊するほどの威力をもっていますから、取り扱いは慎重である必要があります。
一方で、郵便局員はどれほどトレーニングされていたのでしょうか。郵便局の経営スタイルが今のような状態になることを予想して、あるいは理解して働き始めた人はどの程度いるのでしょうか。地域に貢献しながら、地元で働きたいというニーズ就職した人も多いはずです。金融機関であるという認識で就職活動をした人はどの程度いるのでしょうか。銀行、証券、保険、信販(カード)など、金融機関は難しい法制度とそれを守る倫理観がなければ機能しません。それには、相応のトレーニングが必要です。
郵便局員のトレーニングは一筋縄ではいかないでしょう。今後は、販売目標などではなく、たとえばファイナンシャルプランナーの資格取得を販売担当者に課したり、お客様とのコミュニケーションを円滑にし、顧客意向を掴むためのカウンセリング研修など、時間がかかり効果測定が容易でない領域の取組を増やすことも必要だと考えます。
高齢者の利用が多い郵便局だからこそ、どの企業よりも高い倫理観で仕事に従事する必要があります。それは、高齢者の財産を守るためでもあります。もし、今まで通り利用者の財産を守ることができない状態を維持するのであれば、郵便局という存在がコンビニエンスストアに代替される日も遠い未来の事ではないかもしれません。むしろ、郵便局に人々が求める機能をコンビニがすでに代替している事実は、コンビニの少ない過疎地を除けば、郵便局の必要性がなくなっていることを意味しているといっても過言ではありません。
【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら