ヘルスケア

「ゴジカラ村」 訪れるだけでボランティア

 「仲間」がいて、「居場所」があって、「役割」を持つと、生活に思いがけない楽しみが生まれる。子供、高齢者、地域住民らが、支えたり支えられたりするコミュニティーなら、そんな生活が送れそうだ。福祉を担う法人のなかには、30年以上前からこうしたコミュニティーづくりを実践するところがある。(佐藤好美)

 深い緑が避暑地に来たような錯覚を起こさせる。愛知県長久手市の猪高(いたか)緑地に隣接する広大な敷地に、特別養護老人ホーム(特養)や高齢者の通所介護事業所、幼稚園などが点在する。時間に追われない暮らしを目指し、「ゴジカラ村」と呼ばれている。

 退職高齢者のボランティアグループ「きねづかシェアリング」の野村武さん(77)は、ここに週数回やってくる。

 「夏は緑がみずみずしく、春には桜が咲く。毛虫やムカデもいるが、小鳥がさえずる。気心の知れた仲間がいて、自然の中にいる感じがいい」

 ◆狙うは「煩わしさ」

 中庭のログハウスを“基地”に、1人3時間半ずつ3交代で特養などの仕事を手伝う。ゴミ出し、花木の水やり、車いすの洗車…。外から来る不審者や、ふらりと出ていこうとする入所者にも気を配る。

 「介護現場は人が足りない。でも、現場には介護以外の仕事もある。一線を退いたわれわれが手伝おう、というのが基本です」

 仲間の男性(81)も「ボランティアは世のため人のためなんて言うが、実は自分のため。未経験の人には分からない充足感がある」と楽しそうだ。

 運営する社会福祉法人「愛知たいようの杜」などが狙うのは「煩わしさ」だ。大須賀豊博理事長は、「煩わしさには人との関わりが生まれる良さがある」と話す。「不具合はあった方がいい。助けてくれる人がどこからか現れて仲間になる。しかも、助けた人は、みんなに感謝されて、逆に元気になる」とも。

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