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(166)男女の違い 閉経後の動脈硬化リスクに注意を 

 かつては男性の方が女性より有能だという誤った考えが広められており、社会での男女の役割も決まっていましたが、今ではそういった考えが無意味なものであることを私たちは知っています。「男だから」「女だから」ということも言わないようになっています。

 ただ、男女の別が残されている分野もあります。たとえばスポーツでは、今も多くの競技が男女別で行われます。医学でも、男女には性に関係するホルモンと生殖器といったところに決定的な違いがあり、一部の病気のなりやすさなどに影響することが考慮されます。

 50代前半の女性がある日、私のクリニックを受診しました。「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールの値が高いため受診を勧められたそうです。話を聞くと、40歳のころに他の病気から子宮と卵巣を摘除されており、その後から値が高いことを指摘されるようになっていたそうです。

 女性ホルモンであるエストロジェンは動脈硬化に予防的に働きます。悪玉コレステロールの値を下げ、善玉コレステロールの値を上げるという作用を持つほか、直接血管に作用し動脈硬化にブレーキをかけます。女性では主に卵巣から分泌されるのですが、閉経前後からその分泌量は急速に低下します。つまり女性は閉経までは男性より動脈硬化が進みにくいが、閉経からは男性並みに動脈硬化が進むようになるということです。

 11月に米国の医学雑誌に発表された研究は、英国人約14万人を対象に40歳前、早期に手術で閉経した人と自然に閉経した人、40歳以降に通常に閉経した人、3パターンで心血管病の発症率の差を約7年間観察しています。その結果、40歳前に自然に閉経した人は36%、手術で閉経した人は87%、心血管病の発症が高くなっていました。高血圧、脂質異常症、糖尿病の発症は40歳前に手術で閉経した人で最も多く、次いで40歳前に自然に閉経した人、通常に閉経した人という順でした。若くして閉経した場合、動脈硬化のリスクは高まると考え、食事や運動、肥満に注意しなければなりません。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

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