ヘルスケア

「大きな前進」「未発症者は?」 遺伝性がん予防切除に保険適用

 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の患者の発症していない方の乳房などを、予防目的で切除する手術が公的医療保険の対象になることが決まった。医師は「非常に大きな前進」と評価する一方で、患者からは「未発症者が対象になっておらず不十分」との声も上がる。遺伝子検査技術の進歩により、予防的な治療や手術は今後増えると予想され、健康な人も保険の対象になるのか議論が求められそうだ。

 HBOCは生まれつきBRCA1または2という遺伝子に異常があるためにがんのリスクが高まる。乳がん患者の3~5%、卵巣がん患者の10~15%を占めるとされ、発症した家族がいる場合、自分はHBOCではないかとの不安を抱く人も多い。

 HBOCの患者が未発症の乳房や卵巣・卵管を予防的に切除する意味はどれほどあるのか。

 卵巣・卵管の切除に関しては、欧米で卵巣がんの発症や死亡リスクを8割減らせるとの報告がある。卵巣から分泌される女性ホルモンは乳がんの発症を促すため、予防にも効果があるとされる。順天堂大病院ゲノム診療センターの新井正美副センター長は「遺伝子検査で陽性だった人の約3割が卵巣・卵管の予防切除を受けている」と話す。

 乳房については、卵巣・卵管切除に比べて効果を示すデータが少なかったが、2015年に海外のチームが死亡率が半減したとの研究結果を発表。昨年、日本乳癌学会が診療指針で「強く推奨する」とした。

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