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市場規模は1兆円超えの調査も 東京五輪で「ビーガン」にどう対応?

 2020年東京五輪・パラリンピックを前に、肉や卵、ラードなどの動物性食品を食べないビーガン(完全菜食主義者)への対応が議論になっている。ベジタリアン(菜食主義者)は欧米に多く、訪日外国人客の増加に向けて受け入れ態勢の整備は急務だが、日本は正式な認証マークもなく、対応店舗も少ないのが現状だ。五輪本番まで半年あまり。議員も超党派で対応策の検討を急いでいる。(桑村朋)

 「微妙」なイメージ覆すレシピ

 エビのタルタルにキムチ餃子、ブリトー…。昨年11月中旬、大阪市内で開かれたビーガンパーティー。本来は肉や魚を使う料理を野菜などでビーガン風にアレンジした料理約20種類が並ぶ。「味も見た目も本物そっくり」。参加した約30人は工夫された味や彩り豊かな見た目を楽しんだ。

 主催したのは、「VEGAN FOOD協会」(大阪市)を主宰する今井奈都紀さん(39)。7年前に子宮内膜症にかかったのを機に、「体を支える料理」を求め、ビーガンにたどりついた。100種以上のレシピを覚え、ビーガンの料理教室などを開く。

 同市中央区の榊春菜さん(34)は「野菜の味が強いかなと思ったら、本物の肉や魚と遜色ない料理ばかりで驚いた」。今井さんは「菜食は味が微妙だとイメージする人もいるが、肉や魚を使わずにおいしい料理が作れることを知ってほしい」と話す。

 訪日客の5%

 ベジタリアンは肉や魚を食べず、さらに乳製品や卵など動物性食品を一切口にしないのがビーガンだ。食に制限がある人向けのサイトを運営する「フレンバシー」(東京)によると、平成30年の訪日客3119万人のうち、ベジタリアンかビーガンは約5%にあたる約150万人、市場規模は468億円と推計される。

 ただ、世界最大級のベジタリアン店検索サイト「ハッピーカウ」の国内登録店は、1月4日時点で2100店超ほど。4万店を超える欧米には程遠い。菜食主義への理解も進んでおらず、訪日客からは「店やメニューが少な過ぎる」、「和食を食べたいが、魚のだし汁を使っていて食べられず残念」との声もある。

 ベジ議連も発足

 現状を変えようと、昨年11月には超党派の議員連盟(ベジ議連)が発足。菜食メニューへの公的支援のあり方やベジタリアンの公式認証マークの導入を協議中で、今春をめどに担当省庁に対応を提言する見通しだ。

 世界の市場規模は1兆円を超えるとの調査もあるビーガン。NPO法人「日本ベジタリアン協会」(大阪市)の垣本充代表(74)は「公式の認証マークを作るなどして正しい表示をしなければ、訪日客の満足度の低下や五輪中のアレルギー事故を招きかねない」と懸念。その上で「国際基準とされる英国のシステムを参考にしつつ、日本独自のシステムを作るべきだ」と訴えた。

■ビーガン 肉や魚を食べないベジタリアンのうち、卵や乳製品、チーズ、ラードなど動物由来の食品を一切食べない人を指す。表記は「VEGAN」で、完全菜食主義者の意味。ニラやニンニクなど臭気の強い五(ご)葷(くん)野菜を食べないタイプもいる。志向する理由には、健康や宗教上の問題、動物愛護、環境保護などさまざまある。一般に欧米に多いとされる。

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