オーダーブックで読み解く外為市場

日銀に続き、米欧の中銀はどう動くか コロナ禍の金融政策で急変動も

OANDA FXラボ編集部
OANDA FXラボ編集部

 先週の為替市場は、全体的に方向感の鈍い状態が続きました。新型コロナウイルスの感染拡大への警戒感が強い中、今週は米欧で金融政策を決定する会合が予定されており、その結果に注目が集まっています。

 日銀は週明け27日の金融政策決定会合で、長期国債の買い入れ上限の撤廃などの追加緩和策を決めましたが、市場では、米国の連邦公開市場委員会(FOMC)は前倒しである程度の政策を出してしまったこともあり、今回の会合では微調整にとどまる可能性が高いと考えられています。これに対し、ユーロ圏の金融政策を決定する欧州中央銀行(ECB)では追加緩和が発表される可能性が高いとの見通しが中心となっています。

 いずれも事前の報道から、ある程度市場で織り込み済みと考えられるため、大きな変動となる可能性はそれほど高くないと考えられますが、事前に報じられている内容との乖離があると価格が大きく動く可能性があるため、発表前後の動きには注意が必要です。

 また、決定内容だけでなく、その後の議長や総裁の記者会見の内容における今後の金融政策に関する手がかりに市場が反応する可能性も考えられるため、会見中の動きにも注意したいところです。

 ドル円は上下いずれに抜けるか

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は、引き続き前週から続く1米ドル=106.90-108.10円付近の価格レンジ内で、方向感の鈍い推移となりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、この価格レンジ内で構築されたポジションが売買双方で多く、この水準を上下に抜ける動きとなると、売買のいずれかの損切り(損失の拡大を防ぐための決済取引)の注文が増え、価格の動きに方向感が出てくる可能性が考えられるため、いずれに抜けるか、今後の値動きに注目したいです。

 ユーロドルは上昇が勢いづく可能性も

 先週のユーロドルは上値の重い推移が続きましたが、週末には反発に転じ、1ユーロ=1.08米ドル台を回復する動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、下押しにより含み損を抱えた買いポジションが増えたものの、週末の反発により、含み損を抱えた売りポジションも増えており、反発地合いが続くと、これらの売りポジションの損切りの買いも絡め、上昇が勢いづく可能性にも注意が必要となりそうです。

 ポンドドルは上昇余地あり

 先週のポンドドルは序盤に上値の重い推移となりましたが、後半は少しずつ値を戻し、1ポンド=1.23米ドル台後半まで戻す動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、後半の反発により含み損を抱えた売りポジションが増えており、高値を切り上げる動きとなると、これらの売りポジションの損切りの買いを絡めて、上昇が勢いづく可能性を見出すことができ、上昇余地は十分に残されているように見えます。

〈OANDAのオーダーブック〉

オープンポジションはここに注目

 相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。

 これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。

 例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。

 損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。

 オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。

オープンオーダーはここに注目

 前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。

 オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。

 損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。

世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?

 トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。

 OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。

 これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。

※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。

本記事に掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。

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世界各国に拠点を持つFXブローカー
1995年に世界で初めてインターネットを利用した無料の外国為替レート情報の提供を開始したOANDAの日本法人。創業当初から、正確で透明性の高い優れた為替レートを提供するため万全のインフラを整え、取引環境の改善を行ってきた。現在では世界8カ国にオフィスを構え、そのサービスは世界中のトレーダーに利用されている。

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